この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第5巻収録。飢餓が国際的な問題となったナイジェリア内戦を題材にした一編。ビアフラ独立派がハイジャックした飛行機に乗り合わせたゴルゴ。独立派ともども政府軍の攻撃を受けたゴルゴは、抜群のフットワークで戦火を潜りぬける。それが縁で独立派からある狙撃を依頼されるが……。脚本:K・元美津
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ゴルゴから名言を引き出した名もなき女
本話でゴルゴと行動を共にする白人女性は、彼の助けになるでもなく、事態のカギを握るでもなく、単なる足手まといに終始しているという逆に珍しいパターンの女性キャラである。
一貫して黒人を見下し、金の力で我を通そうとする傲慢な人物として描かれている彼女だが、その存在あってこそ、オハネヒ将軍の男気や、彼の息子の純真さもより引き立つのだと言えるだろう。ゴルゴが自分を守ってくれることを期待して彼に抱かれる彼女だが、「二度三度つづけて味わえる女は……そうざらにはいない……」と、いつも以上に白けた表情を見せるゴルゴは必見だ。
独立のため戦う父と子の生き様に涙
件の白人女性と対比される形で、本話で光を放っているのが、独立を求めて戦うイボ族のリーダー・オハネヒ将軍と、少年兵士・サマンバの生き様だ。オハネヒ将軍とゴルゴは初対面で互いを認め合っているようであり、「はした金」で依頼を引き受けるゴルゴの男ぶりは痛快。
また、曇りない目でゴルゴへの尊敬を口にするサマンバも実に清々しい。そして、最後はサマンバを犠牲に敵陣を爆破することをゴルゴに頼むオハネヒ将軍だが、彼らが親子であることがここで初めて明かされるというのも渋い。ハッピーエンドでないからこその読み応えがある一作だ。
イボ人達の悲願の独立は夢と消えて……
本話でも解説されているように、「ビアフラ共和国」として独立を求めるイボ人達は1967年にナイジェリア政府に反旗を翻し、内戦へと突入した。だが、翌年には連邦側に物資の供給を遮断され、ビアフラは飢餓に苦しむこととなる。
本話のタイトルは、当時、飢餓の代名詞とも言われたビアフラの惨状を端的に表したものだ。2年半にわたり続いた内戦は、本話発表の約半年前にビアフラの降伏で終結。オハネヒ将軍のその後は描かれていないが、まず生きながらえてはいまい。本話の読後感には、判官贔屓の日本人の胸に訴えかけてくる切なさがある……。
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東郷 嘉博
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