この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第98巻収録。政府合意のもと一大プロジェクトとして動き出したシベリア開発事業。日本に金だけ出させて実権は手中に収めたい旧共産党員・ウナトフや、間抜けな通産官僚を出し抜き、ロシア・コネクションを牛耳りたい日本のヤクザ・四条統二郎など、腹黒い者たちの陰謀が渦巻く……。
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ロシアに振りまわされる日本
安倍政権はロシアに近づきつつあるが、サハリン2事件を忘れたのだろうか。ロシア東部のサハリン州における資源開発プロジェクトが始まったのは1990年代の初め。日本の三井物産と三菱商事、オランダのロイヤル・ダッチ・シェルにより総事業費100億ドル超(後に倍増)の開発が始まった。ところが2006年にロシア政府から横やりが入る。
環境アセスメントの不備が指摘され、結局ロシアのガスプロムが株式の50%超を取得することで計画の続行が決まる。要するに苦労はたっぷり背負わされて、おいしい果実の大半をロシアに持って行かれたに過ぎない。
目先の利益にとびつく日本
本作に登場するシベリア開発の総事業費は約2兆円。あまりの高額に渋る日本側出席者に対してソ連(本作は1992年発表)のウナトフ通商代表は、「権益比率を(日本)七対(ソ連)三に変更しました」と笑顔を見せる。
しかし黒幕の一人であるソ連軍のチェルカソフは、「資金協力に参加させ、退くに退けない泥沼に引き込み、次第に全権を手中に収めます」と語っている。何のことはない。サハリンとシベリアの違いこそあれ、日本が手玉に取られるとの見方がピッタリ当たっている。三井物産と三菱商事の社員にゴルゴシリーズの愛読者はいなかったようだ。
茶室で抹茶を飲むゴルゴ
ゴルゴの依頼人となるのは外務省の伊達審議官。長期的な視野を重視する伊達は、目先の利益にとびつくようなシベリア開発に参加する愚を阻止するため、私財をはたいて2億円もの大金を用意しゴルゴに困難な任務を依頼する。
ここでゴルゴが驚くべき行動に出る。なんと伊達が立てた抹茶を黙って口にするのだ。飲食には注意を払うはずのゴルゴ。出されたものを飲んだのは、『ワシントン・秘密工作 大統領はお元気?』のウィリアムズ、『ロックフォードの野望』のローゼン・ザメックなどごくわずかだ。ほんの少しの時間で伊達の誠実さを感じ取ったのかもしれない。
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研 修治
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