この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第24巻収録。テロリストのペランはシカゴに輸送中のプルトニウムを国外に持ち出したうえ、高値で売りさばくことを目的に強奪。そして、その罪をゴルゴになすりつける事を考えつく……。核燃料に関する事柄が解りやすく描かれており、知識がなくとも楽しめる一編。
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核をテーマにしたエピソードのはしり
核兵器や核燃料を扱ったエピソードは多いが、そのはしりと言えるのが本話。元軍人のペランが核燃料の強奪を企むというのが本話の骨子だが、警備の手薄な使用済み燃料を狙うという計画が秀逸で、読者への説明も自然でわかりやすいものとなっている。
ちなみに、現在こうした文脈では原子爆弾も水素爆弾も一括りに「核兵器」や「核爆弾」と呼ばれることが多いが、本話では一貫して「原爆」という言葉が用いられている。また、核とは関係ないが、ゴミ収集車がまだ「塵芥車」と言われているのも興味深い。70年代当時の言語センスがわかる一編だ。
近代的情報屋は人間の質に問題あり?
様々な情報筋を利用するゴルゴだが、本話では「近代的システムを売りにした国際犯罪情報屋」なるものが登場する。セキュリティに守られたビル内に所在し、コンピュータで資料を出してくる、1974年の当時にしては確かに近代的な装いだ。
が、窓口の人間は無駄に饒舌で、「中で働く人間の方は整理されていないようだな……」とゴルゴに小言を食らっているのが可笑しい。しかもその直後、ゴルゴがペランを狙っていることがあっさり本人に漏れてしまっている。依頼筋からかもしれないが、この情報屋が漏らしたのだとしたら報復ものだろう。
ペランの計画を看破するゴルゴの洞察力
今回のゴルゴは至近距離からの一発だけで依頼を遂行しており、アクション自体はあっさりめだが、そこに至るまでの経緯ではゴルゴの有能ぶりが入念に描かれている。ペランの策略で警察に誤認逮捕されるものの、嘘発見器の針をピクリともさせない精神力を見せ、さらには小さな手がかりの積み重ねからペランの計画を見抜いて完全に彼を出し抜いてみせる。
ラストで彼と対峙したゴルゴが、「ひとつひとつ……加算していったまでだ」と淡々と説明するくだりは痺れるような格好良さだ。探偵小説の世界に放り込んでも主人公として活躍できるに違いない。
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東郷 嘉博
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