この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第49巻収録。第46巻『鬼の復讐』の続編。シリーズ屈指の大店押し込みと、平蔵の義妹・お園の誘拐事件が同時発生する。すべては宿敵・張り子の鬼吉の仕業だった……。押し込みを阻止するか、お園を救い出すか、ふたつに一つ。悩む平蔵。火盗改方vs張り子の鬼吉、ついに完結!
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同心、小柳の活躍
火盗改メ同心の小柳安五郎は平蔵の義弟にあたるのだが、これは平蔵の腹違いの妹であるお園と夫婦という背景があるぞ。同心としての信頼も厚く、盗賊の捕縛や制圧にも評判の高い実力派の同心へと成長した姿が見える。本作は小柳とお園が中心となり話が進んで行く。小柳・お園夫婦の何気ない会話も伏線となっていて、先の展開が予測できないのが面白い話なのだ。
また、密偵たちの活躍も重ねて見る事が出来る点で、非常に人気のあるシリーズの裏付けかもしれない。密偵たちが潜入調査を試みるも、どうやら盗賊どもは密偵が”狗”である事を知っているようである。百戦錬磨の密偵たちの策略が簡単に見抜かれるとは、背後には何か大きな存在があるのだろうか。果たして密偵の行く末やいかに。
三度、張子の鬼吉あらわる
盗賊たちが密偵の策略を見抜いていた理由……背後には平蔵の宿敵である張子の鬼吉がいたのである。鬼吉は津軽藩への恨みを持つ藩士の一人で、『張子の鬼吉』『鬼の復讐』にて平蔵や密偵たちを苦しめた悪党だ。
密偵たちの潜入調査は鬼吉の撒いた罠だったのだが、鬼吉の平蔵に対する恨みはそれは深いものだったようだ。多くの手下を鬼平に処断され、それでも生き永らえた鬼吉の心は、まさに平蔵を苦しめ、そして倒さんとばかりに燃えている。平蔵を確実に葬るために鬼吉の更なる罠とは。
鬼vs鬼の対決
飢饉に苦しみ、そして死に行った津軽藩の人々の恨みを背負い鬼となった鬼吉、かたや鬼平の異名を取る長谷川平蔵。張子の鬼吉シリーズの完結編として文句なしの力作と言えるだろう。
タイトルになっている鬼哭啾啾とは、悲惨な死に方をした亡霊の泣き声が恨めしげに響くさまを示すのだが、コミック発売当時に東日本大震災が起こっており、その惨状を津軽藩の飢饉として表現したという説がある。
廃墟と化した大災害の爪痕は、人々の心の鬼を呼び起こす出来事だったのかもしれないな。苦しい時にこそ為政者は人心掌握を心がけて、丁寧なケアが必要である事を言いたかったのだろうか。
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滝田 莞爾

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