この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第17巻収録。ある晩、盗賊・犬神の竹松は、ある殺人事件に遭遇する。被害者は悪徳質屋の橋本屋助蔵。竹松は犯人を目撃したが、その顔はなんと火盗改方の与力・富田達五郎だった。富田を脅迫し、押し込みの引き込み役に使おうとする竹松だったが……。
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首刎ねから始まるストーリー
衝撃的なアクションシーンから始まる物語だ。闇夜の河原で悪党が商人を惨殺、船頭の首を刎ねるという無残な事件で幕を開ける。ところがこの悪党は火盗改メの与力、富田達五郎である事が判明する。同心を纏める立場にある与力の身分の者が市民を殺害するという凶行の裏には何が潜んでいるのか。長官として火盗改メを統べる鬼平の複雑な心境をも描いた作品だ。
重ね切り
富田の凶行現場を目撃した盗賊は、過去に盗賊頭と弟ともども富田に一刀両断されていた。この時に一振りで二人を重ね切りにしていたのだが、それを見た忠吾は畏怖の念を抱いていたようだ。これはなぜだろうか。日本刀の切れ味を評価する際に罪人の骸を重ねて試し切りをして、二人分が切れたら二つ胴、三人分なら三つ胴、といった評価がなされていたのだ。
また重ね切りといえば、姦通をしている男女をまとめて斬り落とすことをいうこともあり、いわば相手に対して畏敬の念を持たない殺害方法として知られるぞ。こうした経緯から一振りで二人を斬る事は、相手を見下している行為として認識されていたようだ。
富田与力の結末やいかに
惨殺現場を目撃され、盗賊から強請りを掛けられる。つまり火盗改メの与力や同心による不祥事を取り扱った作品だ。その不祥事の形は様々ではあるものの、盗賊の捕縛をすべく立場にある者としてあってはならない不祥事も登場する。
同心の田中貞四郎が登場する『鈍牛』、同じく同心の佐々木新助が登場する『あばたの新助』などのストーリーも同心の不祥事を描いた作品となっているぞ。富田の場合には盗賊の引き込みをさせられることとなったのだが、多くの場合、不祥事を起こした同心は良い結末を迎えていない。本作の富田は盗賊の強請りに対してどう対応したのか、そしてどうなるのか気になる所だな。
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滝田 莞爾
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