この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第170巻収録。高い致死性をもつウィルス「二パウィルス」。このウィルスを使ってアメリカへの生物テロ計画が進行していた。CIA局員のクラークはウィルスが蔓延するマレーシアの山村から、ウィルス感染したコウモリをアメリカへ輸送する計画をキャッチする……。
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人間に迷惑している可哀想なコウモリ
コウモリは悪魔の手先というイメージがある。それは、暗い洞窟に住むことや、さまざまな細菌の宿主となり、それが何らかの原因で他の動物に感染することにより、やがて人間へと伝播することへの恐れからくるのではないだろうか。コウモリが悪いのではない。心に悪魔を飼っている人間が彼らを悪用することに問題があるのだ。
飛行機事故にみせかけて、生物細菌兵器を殲滅させるという困難なミッションに、近年航空業界を悩ます事情を利用した、驚くべき頭脳作戦を立てて挑むゴルゴ。アメリカはもとより、全人類の生命がその銃弾に託される。
ホテルの一室で繰り広げられる惨劇と宴席
クラークがイシバシとキャサリンからホテルの一室でニパウイルスについてレクチャーを受ける場面に総毛立つ。コウモリから家畜へ、そして空気感染で人へと広がる惨状が、死に瀕した家畜のリアルな描写により、見えない細菌の恐ろしさが可視化され、妄想がかき立てられて思わず身震いしてしまう。
それにしてもクラークは「あなた方はCIAのおごりで夕食を楽しんでくれ」と彼らにいうけれど、いくら豪華なディナーでも、あの状況で楽しめる図太い神経の人はいるのだろうか。ダイエット中の人にはお食事前に読むことをおすすめするが。
愚か者は死ななければ治らないのか
科学者・寺田寅彦は関東大震災の際、朝鮮人が井戸に毒を入れたというデマをこう評している。「合理的に考えれば彼らが地震を予知できるはずもなく、またあの混乱の中でどうやって大量の毒を入手するのか」人間は憎悪に捕らわれると視野が狭まり、合理的な判断が失われる。
今回はイスラエルに敵対し、アメリカを憎悪するイスラム過激派の謀略で「米国を壊滅させることが我々イスラムの良心の証」などといっているが、繁殖した細菌君たちにとって、宿主はイスラムもキリストもなく、最終的には自分たちも壊滅することがわからないのだろうか。
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野原 圭
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