この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第177巻収録。20億円の現金を輸送中の飛行機が墜落した。現金を発見した亡命チベット人たちは、中国の圧政から独立を勝ち取るため、その20億円を使ってテロ組織結成へと動く。一方、20億円を香港へ運ぶ予定だったマフィアは、チベット人たちを殺害するためチベットへと向かう……。
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もしも使いきれない大金を手にしたら
誰でも一度は大金持ちになってみたいと思うだろう。お金持ちになったら、豪邸や高級車、ブランド物を買って贅沢三昧など、ヤンチェンと似たり寄ったりのことを考えるのではなかろうか。しかし、豪邸や車は維持が面倒だし着慣れない洋服は窮屈で、美食を続ければいずれ医者の世話になる。
だから、大金を手にしたときの贅沢以外の使い道を考えておいた方がいい、そんなことを思わせる作品だ。迫害を受け続けるチベット民族の問題や彼らの信仰についての解説も興味深い。果たしてゴルゴはギャルポジのいう死の破壊者か、それとも閻魔大王か。
金は人を狂わす麻薬
過疎な地に突然、飛行機が墜落したが、ニュースにもならず、金の回収に誰も現れないことから、表沙汰にできない金と知り、発見した住民たちが横取りしようと協力しつつも、互いに疑心暗鬼になっていく映画「パーフェクトプラン」を彷彿とさせるストーリーだ。
貧しさに嫌気がさし、大きな幸運を得たいと思っているような人間が、目の前にある大金に誘惑されるのはやむを得ないとは思うが、非合法な金は大きなリスクも背負っている。金は、麻薬が患者を痛みから救うように、貧困を救ってはくれるが、有り余れば麻薬同様中毒患者となる。
二転三転、待っていた予想外の結末
ゴルゴが寒さから守るために銃を保護している様子など、映像では「絵にならない」から無視している場面についてリアリティを追求しているのが素晴らしい。大金を巡り、欧州、中国、ネパール、チベット、それぞれの地の人間の嘘と騙し合いが入り乱れ、真実が最後まで隠れているミステリーの要素も組み込んでいる。
テンジャの祖母の言葉「お前は仏のような子だよ」が意外な結末の伏線となっている。カンツォはギャルポジの機転と祈りで救われたが、それは最後まで私欲ではなく、その是非は別にして、大義に金を投じるつもりだったからだろう。
野原 圭
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