この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス未収録作品。ブラジルで現地人とともにマグロ漁を営む神埼。順調に事業が拡大していた矢先、盟友の佐藤が不可解な自殺を遂げ、神埼のもとに佐藤からの遺書が届く。そこには右腕として信頼していたブラジル人・サントスが会社の乗っ取りを画策している事実が記されていた……。
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手痛い裏切りにも挫けない漁業者の魂
本話の主役といえる神崎は、サントスの裏切りによる会社乗っ取りの憂き目に遭いながらも、諦めずマグロ漁業に挑み続ける熱い男。こうした水産事業の略奪事例が現実にあるのかは不明だが、2013年には日本のマグロ漁船がブラジル当局に拿捕されるという事件もあった(※)。
その背景には、高性能の日本漁船への不満があったのではとの話もあり、異郷の地で事業を営むことの難しさを感じさせられる。それにしても、サントスの件を経てなお、ラストで再びブラジル人の若者を雇って再起に漕ぎ出す神崎……。今度は裏切られないことを祈るばかりである。※出典:四国新聞社『日本漁船、ブラジルで拿捕/環境規定違反と当局』(2013年9月25日)
技術革新が進む麻薬密輸潜水艇
本話では、サントス率いる麻薬組織の切り札として、ジャングルの奥で建造された潜水艇が登場する。『深海の盾・無音潜水艦』で最新潜水艦の開発秘話を目の当たりにした後では、随分とチープに思えてしまうが、これも作り話ではない。
2000年代以降、南米の麻薬カルテルでは実際にこうした潜水艇が使用され、多くの摘発事例が報告されているのだ。なお、作中の潜水艇は水面直下を航行するタイプと思われ、巡視船にあっさり拿捕されているのだが、2010年代には完全な潜水艦の発見事例も出ているという。密輸組織と当局のイタチゴッコは続きそうである。
新たな船出を穏やかに見下ろすゴルゴ
今回はストーリーの裏方に徹していながら、情報屋の女をしっかり喜ばせたり、水中スクーターで海中を駆けたりと、要所要所でしっかり存在感を発揮しているゴルゴ。依頼については、アメリカ・DEAが動いたのではないかとの推測が語られるのみだが、潜水艇の摘発の鮮やかさを見るに、どうやらそれで当たりだろう。
神崎はゴルゴの存在すら知らないまま、サントスに天罰が下ったと思って得心していたが、ゴルゴの方では勿論彼らの事情も調べていたようだ。神崎丸の新たな船出を旅客機から見下ろす彼の横顔は、どこか優しげで印象的である。
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東郷 嘉博
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