この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第198巻収録。元副総理・長嶋克典に解雇された元秘書の男が、秘書時代に知りえた秘密をネタに金を要求してきた。第一秘書の藤原は、「誰が見ても天災だと判断されるように」の条件をつけて、ゴルゴに仕事を依頼するが……。お馴染みの“くされ縁”ジャーナリスト・深沢も登場。
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現役の可動橋を舞台にした土木ミステリー
お馴染み深沢記者の狂言回しによる土木もの。『誰がそれを成し得たのか』や『日・ASEAN会議』、後の『i-Construction』など、土木業界への取材に基づくエピソードは綾羅木恭一郎脚本ではお手の物だが、本話では「動く土木構造物」である可動橋が重要な要素として取り上げられる。
作中に登場する三重県四日市市の末広橋梁(作中では末長橋梁)や臨港橋(作中では臨湾橋)は、いずれも実在のもので、X(旧Twitter)では『ゴルゴ』への登場を喜ぶ地元民のコメントも多く見られる。現実との巧みなリンクも本作の魅力の一つだと実感させられる。
嘘を見通せるのはゴルゴだけでなく……
ゴルゴが依頼人に会う前に下調べを欠かさないこと、そして嘘を許さないことは有名だが、今回も身分を偽ろうとした藤原に即刻「聞くまでもない……」と告げて立ち去ろうとする「ゴルゴ節」が炸裂している。しかし、その後の藤原の言葉には、長島議員の不関知も含めて嘘はなかったようで、見極めて納得したらしきゴルゴの表情は印象的だ。
とはいえ、全てが終わった後の長島議員の反応を見ると、彼も藤原が何か手を回した可能性には思い至っているのに違いない。それを「天罰」として飲み込んでしまうのが、大物政治家の器ということなのだろう。
神業と入念な準備で引き起こされた「天災」
明らかな天災と言える状況で標的・菰野を始末してほしいとの依頼を受け、ゴルゴは可動橋を舞台に一計を案じる。前夜の内に薬品でワイヤーケーブルを腐食させておき、当日、菰野のプレジャーボートがその下を通る瞬間にケーブルを狙撃し、偶発的な橋の落下に見せかけて殺すというものだ。
しかも、事前にタンクローリーの横転事故を引き起こし、腐食の原因をそれと納得させる工作付きである。深沢も驚嘆している通り、神業と事前準備の合わせ技による完璧な計画。標的にとってゴルゴに狙われることは、確かに回避不能な天災に等しいだろう……。
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東郷 嘉博
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