この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第198巻収録。北欧における銃規制問題にスポットをあてた一編。人気漫画家のサカリは、強盗に銃殺された妻の仇を討つため、ゴルゴに“ある条件”をつけて依頼をするが……。妻の仇討ちと同時に銃規制への追い風になるよう、サカリが考え出した奇想天外なアイディアとは? 脚本:香川まさひと
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軽すぎる刑罰に被害者遺族の心情は……
人気漫画家の妻が強盗の凶弾に命を奪われる、衝撃的な事件から始まる本話。愛妻を失ったハロネンは、犯人への復讐心をなんとか抑えて生き続けるも、犯人のライコネンは僅か13年で釈放されてしまう。
北欧といえば、刑務所の快適さなどが度々話題になるが、そうした軽すぎる刑罰を被害者遺族がどう感じるかは、本話のハロネンの描写からも想像に難くない。まして、そのライコネンが銃規制キャンペーンに登壇すると聞いた時の彼の心境には、深く同情してしまう。ゴルゴへの依頼で妻の無念を晴らし、辛くも立ち直った彼に称賛を送りたい。

評価を意にも介さないゴルゴのビジネス哲学
今回のゴルゴへの依頼は、市民の犯行に見せかけるため、わざと下手な狙撃でライコネンを殺害してほしいというもの。この条件を承諾した彼に、依頼人のハロネンは「あなたの業績や評価を傷つけませんか」と問うが、ゴルゴは「仕事を評価できるのは、世間でもなければ自分でもない、“依頼者”だけだ」と平然と言い放つ。
解説の杉森氏も、「……」が入っていない点に注目して、ゴルゴの毅然としたビジネス哲学の表れと述べているが、その通り印象的な一言だ。誰より優れた腕を持ちながら、評価を意にも介さない姿勢こそ、ゴルゴの真骨頂だろう。
本当に怖いのは「銃」か「人」か?
世界幸福度ランキング1位の国として知られながら、今でも銃所持率は欧州トップのフィンランド。2024年にも、12歳の児童による銃撃事件があり、規制強化論が盛り上がったばかりだ(※1)。一方、ロシアと国境を接する同国では、防衛意識の高まりから銃の所持申請も増え、射撃場の増設も計画されているという(※2)。
銃規制の強化は犯罪の減少に繋がりうるのか……。答えが出ない命題だが、本話のラストでハロネンが漫画のキャラに言わせた台詞は、彼なりの信念だろう。「本当に怖いのは銃よりも人」、それもまた一つの真理なのかもしれない。
※1:NHK「フィンランドの学校で銃撃 児童3人死傷 12歳の児童を身柄拘束」(2024年4月2日)
※2:BUSINESS INSIDER「ロシアと国境を接するフィンランド、国防意識の高まりを受けて「射撃場」を大幅に増やす方針」(2024年2月28日)

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東郷 嘉博

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