この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第144巻収録。日本人バンカーの吉田は、世界的情報監視網を利用した日本企業の盗聴の事実を知る。その裏には英米など五か国が極秘裏に進める「エシュロン・システム」があり、その総裁タッカーの暗躍があるのだった。日本企業浸食を危惧する吉田は、タッカー暗殺とエシュロンの日本基地の壊滅をゴルゴに依頼する……。
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1984年の予言
真珠湾攻撃の暗号解読や日米経済摩擦交渉における情報漏漏洩疑惑など、戦争や外交の場面で公然の秘密として語られてきたのが国単位での通信傍受(盗聴)だ。『歴史の底に眠れ』でも暗号解読で得た情報をもとに当時の英国首相チャーチルが大きな政治決断をする場面が出てくる。
盗聴といういうものは、このような必要に迫られた局地的限定的に行われるものだという思い込みを誰しもが持っていたのだが、それを打ち破ったのが、ジョージ・オーウェルの著作『1984年』であろう。1949年に刊行された『1984年』では、市民の言動すべてが網羅的に当局によって監視されている社会が描かれている。
監視社会の到来
当時、『1984年』を読んだ読者は「そんな馬鹿な!」と思っただろうが、“事実は小説より奇なり”。21世紀の迎えて「1984年」の監視装置テレスクリーンよりはるかに高性能で網羅的なエシュロンや巨大IT企業により、個人情報はほぼ捕捉されてしまっていることはもはや万人の共通認識だ。
現代の監視社会の到来を数十年前に予見したオーウェルの想像力には脱帽するほかない。今エピソードに数年先駆けた『最終暗号』でもNSA(アメリカ国家安全保障局)による大掛かりな通信傍受による監視社会の進行が不気味に描かれている。
テクノロジーはツール
闇の世界に生きるゴルゴにとって最も警戒すべきは自らの情報や行動を取得されてしまう通信傍受であろう。現にインターネットなどを介した情報収集力を武器にして対峙してきた相手(『情報遊戯』『生存確率0.13%』『BEHOLDER』※BEHOLDERとはまさに“監視者”の意)には苦労している。
それでもゴルゴはテクノロジーを否定しない。テクノロジーに精通はするが、あくまでツールに過ぎないと考えている。仕事に対する真摯な姿勢、心理学、交渉術などを高めることが生き残りの術と考えているのだ。テクノロジー頼みの日々を過ごしがちな我々凡人も見習いたいものである。
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片山 恵右
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