この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第142巻収録。演習中のロシア原潜「イリスク」が沈没した。早期の引き上げを目指し、政府は西側のサルベージ業者に引き揚げ作業を委託する。一方、ロシア軍部はこの引き上げを失敗させることで、現場責任者のアルキニスと大統領を失脚させようと画策。陰謀をキャッチしたアルキニスは、作業員に扮したゴルゴに運命を託すが……。脚本:品川恵比寿
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ゴルゴ版水戸黄門
妨害工作のために善良なイルークの妻子を人質にしたり、ゴルゴたちの生命維持装置を切ったりとやりたい放題でのリピンスキー大佐。見事なまでの悪代官ぶりを演じたリピンスキー大佐をゴルゴが鮮やかにやっつける。ゴルゴ版水戸黄門と言って良いだろう。
ストーリーもわかりやすくスッキリとした読後感なので、ゴルゴファン以外にも勧めやすいエピソードである。大佐に似た悪役は少なくないが、ここでは『ミクロの油田』のチャップマンを挙げよう。チャップマンは悪代官というよりは”越後屋”といった趣きであるが、野望をかけたプラントを破壊されゴルゴから眉間に一発喰らっている。
映画化される前にゴルゴ化
エピソード中では“イリスク”と評されているが、実際の事件の潜水艦名はクルスク。日時、場所、死亡者数などの事故概要はほぼ史実通り。2000年の事故発生当時はずいぶん世間を騒がせたが、翌年のアメリカ同時多発テロ発生で世間の注目は薄れてしまった。
原子力潜水艦の事故と数年に渡るサルベージなど、映画化の格好の事件であるが、なぜかなかなか映画化されず、ようやく2018年にリュック・ベッソン(映画『レオン』監督や『トランスポーター』製作)製作総指揮で映画化された。媒体の違いはあれど、ゴルゴでいち早くエピソード化されているのはファンとして誇らしい。
サルベージは歴史のロマン
今エピソードはイリスクのサルベージがストーリーの大きなカギとなる。サルベージを扱ったものとしては沈没船引き上げを生業とする“トレジャーハンター”ゴドウィンが登場する『歴史の底に眠れ』がある。
『歴史の底に眠れ』は第二次世界大戦のイギリスの闇(名宰相の誉れ高いチャーチルが大局のため一部の国民を犠牲にした)を炙り出した名作だ。同様のエピソードに『暗黒海流』がある。『暗黒海流』で語られる沈没船阿波丸のサルベージに端を発するストーリーは、昭和史の闇(財宝の横領から戦後防衛利権へ発展)を抉り出している。こちらも名作だ。
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片山 恵右
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