この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第173巻収録。旧東ドイツ時代の機密文書を次々と復元しているドイツ政府。復元された文書から70年代に発生した原発事故が隠蔽されていたことが発覚した。事故の当事者で現在は核査察委員長の要職に就くバーサイトは、事故隠蔽の証拠を“ある場所”に隠蔽していた……。脚本:熊坂俊太郎
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ベルリンの壁崩壊。揺れ動くドイツを描く
1989年11月、ドイツを東西に隔てていたベルリンの壁が崩壊した。そんな揺れ動くドイツの移り変わりを描いたのが本作『ハインリッヒの法則』だ。かつての花形ニュースキャスターであるギュンターに持ち込まれた文書を発端として、東ドイツ時代からの原子力発電の権威であるバーサイト博士に注目が集まる。
ここで面白いのは即ゴルゴに依頼して射殺とはならず、状況の悪化を恐れるアメリカの暗躍で文書を握りつぶしに行くことだ。もっともアメリカ政府が具体的に何をしたとも描いておらず“暗躍”は読者の想像に任せているものの、いかにも「ありそう」と思える展開になっている。

狙われるギュンター。深まる謎
ニュースキャスターは休暇をとらされ文書も行方不明になってしまうのだが、ここで別筋からゴルゴに依頼が入りバーサイト博士の汚れた過去が明かされる。その過程におけるゴルゴの4発の狙撃は見事という他ないだろう。そして本作はハッピーエンド……となっていない。
タイトルの「ハインリッヒの法則」は1つの大事故の陰に多くの小さな事故や無数の異常があることを示した言葉だが、本作では間接的な国家体制の批判にもつながっている。
ハインツ教授の最後の授業そは?
最後にギュンターが“良心そのもの”と評した恩師のハインツ博士がゴルゴによって射殺されるのだが、ハインツ博士の「贖罪を……あなたの銃弾で裁いてほしい」との願いをゴルゴが「そんな趣味はない」と却下する場面はゴルゴの愛読者ならおなじみの展開だろう。
ドイツの分裂・統合をテーマにした作品には『情報漏洩源』『ドイツはひとつ』『安全地帯の亡霊』などがある。20世紀最後の大事件とも言われるドイツ統合をゴルゴシリーズで堪能して欲しい。


研 修治

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