この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第32巻収録。ロンドン警視庁は、政界の実力者・ウォーレス卿が、議会での発言をめぐって地下組織から命を狙われているとの情報を掴んだ。ゴルフのプレー中だったウォーレス卿は「逃走経路が確保できない場所で襲われることはない」と断言しプレーを楽しむ。が、ウォーレス卿は狙撃されてしまい……。脚本:K・元美津
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刑事達の目をあざむく神業の跳弾射撃
本話では、刑事達の目をあざむいてウォーレス卿を仕留めるため、跳弾を利用して銃弾の角度を変えるというゴルゴの神業スナイプが見られる。ゴルゴの超絶技巧の中でも比較的よく用いられる「跳弾射撃」。
有名なところでは、モスクの屋根に跳弾させる『110度の狙点』、ベルトのバックルを利用する『ワイズガイへの道』、そして驚愕の水面跳弾が披露される『硝子の要塞』などがあり、それら後発作品と比べると本話の跳弾はかなりシンプルだ。とはいえ、カモフラージュに用いる林の位置を計算に入れ、刑事達を出し抜いた手腕は脱帽の一言である。
刑事達より一枚も二枚も上手なゴルゴ
刑事の目をあざむくといえば、今回はライフルの隠し方にも、ゴルフ場という舞台ならではのスパイスが効いている。今回のゴルゴは、分解したライフルをクラブの中やバッグの底に巧みに隠し、ダンカン警視の所持品検査をかいくぐるのだった。
ゴルゴを怪しみ、バッグを調べるところまで行っていながら、そこに銃が隠されているとは気付けなかった警視。ここは彼の不手際というより、ゴルゴの用意周到な準備を褒め称えるべきだろう。それに引き換え、「逃走経路のない場所では襲われない」と決めつけて安心していたウォーレス卿の甘さときたら……。
一矢報いたとはとても言えない警視の鉄拳
かくしてゴルゴを取り逃がしてしまうダンカン警視だったが、上級職らしからぬ彼の熱血ぶりは特筆に値する。「ゲストキャラの刑事がゴルゴ検挙に心血を注ぐものの、結局は証拠が上げられず、悠々と立ち去るゴルゴを地団駄を踏んで見送る」というのは定番パターンの一つ。
だが、本話のダンカン警視は去り際のゴルゴに悔しまぎれの鉄拳を食らわせている。よしんばゴルゴが反撃してくればという見込みがあったのかもしれないが、どちらかというと激情にかられての行動だろう。決して大物とはいえないが、感情移入しやすい登場人物だったといえる。
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東郷 嘉博
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