この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第41巻収録。中ソ国境で国籍不明の遊牧民集団が発見された。報道された写真の中に、一人の老人の姿を発見した同盟通信社の元記者・長田は、驚愕の表情を浮かべるのだった……。昭和11年の2.26事件に端を発するゴルゴ出生の秘密とは? ゴルゴに弟がいたという大胆な仮説で迫る圧巻の128ページ。脚本:きむらはじめ
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ソ連侵攻前にアフガニスタン
今エピソードはソ連によるアフガニスタン侵攻(1979年12月)が始まる前のことであり、それまで日本人はアフガニスタンのことをほとんど知らなかったのではないか。ソ連のアフガニスタン侵攻と言えば、『カフカーズの群狼』でソ連のアフガニスタン侵攻の口火はKGB特殊部隊アルファによるものと言及されている。
アフガニスタンに題を取ったエピソードにソ連侵攻後を描いた『ゼロの反撃』やアメリカがアフガニスタンにばら撒いた携帯ロケット砲が起点となる『スティンガー』、戦禍のアフガニスタンで医療ボランティアを行う女性医を描いた『荒んだ大地』などある。

五島秀之の濃すぎる人生譚
ゴルゴ出生譚はゴルゴシリーズの中でも人気のジャンルだ。出生譚モノはスケールが大きく密度が濃いという特徴を備えている。今エピソードもスケールが大きいのだが、後のゴルゴと匂わされる貴之の出番が少ないため出生譚モノとしては密度は薄い。ただし五島秀之の人生を辿るストーリーとしてならば、密度は濃い。
二・二六事件の青年将校が満州で馬賊の頭目になり、イスラエルの建国に力を貸し、最後に中ソ国境で放射線被曝するのだから“濃い”を通り過ぎている。月並みな言い方で申し訳ないが、“波乱万丈の人生”とはこの五島秀之の送ってきた人生のことであろう。
珍しく女性ウケするキャラクター・竜造寺
通信社の若手記者、竜造寺。『トリポリの埋葬』に登場する鷹谷主任とキャラがかぶる。一方は通信社の記者、一方は公安一課特殊処理班に所属する主任ということで職業は大きく異なるのだが、行動力のある二枚目美男子好青年というところが共通項。そしてめっぽう昭和の匂いがする。
“この二枚目美男子好青年で昭和の匂い”が、ゴルゴには珍しい女性人気のありそうな人物造形となっている。この点こそがキャラカブり感を醸している理由だろうか。竜造寺はラストで行方知らずになってしまうあたり、女性ファンをさらに惹きつける要素になっているのではないだろうか。

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片山 恵右

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