この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第186巻収録。日本で印刷された新国債券が、ソマリア沖で海賊に強奪された。奪還の命をうけた日本の公安調査員・深見は、現地で暮らす弟の良助に協力を依頼する。調査の結果、新国債券に辿りつくには、「英雄ムハンマド」の再来を自称する男を始末することが必要だった……。
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依然として続く「ソマリアの海賊」の脅威
ソマリアの海賊、そして「ムハンマドの再来」を名乗る男の脅威が描かれる本話。作中で語られる植民地時代の英雄、サイイド・ムハンマド・アブドゥラー・ハッサンは実在した人物で、イギリスからの独立運動を率いるも、最後は病死したという。
一方、後の『アデン湾の餓鬼』でも取り上げられる「ソマリアの海賊」だが、日本の海上自衛隊を含む各国当局の対処や、ソマリア国内の政情の安定により、2018年頃にはほぼ撲滅されていた。しかし、2023年頃からは政情の悪化に伴って再び海賊の出没が相次いでおり、予断を許さない状況のようだ(※1)。
兄弟の絆はゴルゴの目にどう映ったか……
作中、深見との会話中に割って入ってきた良助に、ゴルゴは「俺にとってはただの目撃者だ」と銃を向ける。緊迫のシーンだが、思えばゴルゴは、依頼者の深見と会う前に彼の素性を調べているはずである。疎遠になった弟がこのエチオピアにいることも把握済だったに違いない。
となると、銃を向けたのはゴルゴ流のブラフで、兄弟の情を確認したかったのだろうか。兄弟の絆が離れた遠因に自分が関わっていたことまで知っていたとは思えないが、標的の「無力化」という依頼に対し、宝石を撃ち抜く形で応じたのは、ゴルゴなりの気配りだったのかもしれない。
スポーツ医学で紐解くゴルゴの能力の秘密
ゴルゴの超人的な能力の秘密については、これまでにも作中で様々な考察がなされているが、本話ではスポーツ医学の観点から新たな知見が語られている。筋肉のセンサーというべき「筋紡錘」の極度な発達が、彼の人間離れした身のこなしの秘訣ではないか、というのだ。
実際、運動生理学やリハビリテーションの分野でも研究が行われており、筋紡錘の働きを増加させることが、アスリートなどに有効な治療法となる可能性があると述べる研究者もいる(※2)。かの『バイオニック・ソルジャー』のライリーも、筋紡錘の働きを強化されていたのかもしれない?
(※1)出典:読売新聞オンライン「『ソマリアの海賊』復活か、人質にした乗組員の身代金で荒稼ぎ…政情安定せず『海賊野放し』憂慮」(2024年2月10日)
(※2)出典:新潟医療福祉大学理学療法学科「反復他動運動によって、円滑な関節運動を遂行するために重要な抑制機能である脊髄相反性抑制が増強する!!」(2019年11月3日)
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東郷 嘉博
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