簡単なあらすじ
SPコミックス第144巻収録。依頼人の石油王・ベネディクトと会うために遊園地を訪れたゴルゴ。しかしベネディクトからゴルゴと会う旨を聞かされていないボディーガードのコンラッドは、ゴルゴがベネディクトを狙う刺客だと勘違いし、ガードマン総出の一斉攻撃を仕掛けてしまう……。
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小悪党と元FBIの命取りな勘違い
冒頭、狡猾な小悪党カーニーのキャラクターが実にわかりやすく示されている。金がすべてのカーニーと『真実の瞬間』のシムズ同様、かつてゴルゴに煮え湯を飲まされた元FBIコンラッドの迷コンビが、勘違いにより暴走する、というストーリーがテンポよく展開される。
何よりこの2人の迷走には笑うしかない。アメリカでは遊園地に入場するのに武器の携帯をチェックするという、日本では考えられないルールも興味深い。しかし、最近日本でも物騒な事件があいついでいるので、今後は特に遊園地などで、そんなことも現実化するかもしれない。

あのゴルゴが、まさかのかぶり物?
ゴルゴを、百万人めの記念入場者として隔離しようとするが『殺人劇の夜』で、この策略をミッションに使っている彼が騙されるはずもない。「大人のマナー読本」に掲載したくなる素晴らしいセンスで、スマートにかわされてしまう。
単細胞のカーニーは仕方ないが、コンラッドは、ゴルゴが素直に、のこのこ案内についてくるとでも思ったのか、理解に苦しむ。『ソフホーズ』のシムズ同様ゴルゴへの恨み骨髄に達し、頭に血が上っているコンラッドは、かぶり物を着た従業員に対し思いこみで的外れな脅しをしたりと完全に判断を誤っている。
お気楽なカーニーの悪運が尽きるとき
それだけはあり得ないだろうに「プロの殺し屋だってたまには遊園地で羽をのばしたいこともあるだろうよ」と結論づけるカーニーの超お気楽な考えがすごい。しかし、楽天家なのは良いが、物事がすべて自分に都合良く廻ると思うのは手前勝手というものだ。
面倒だからといって、仕事の安全確認を怠るのは言語道断で犯罪に近い。普段、前半にくるはずの「用件を聞こう」というゴルゴのセリフが最後を締めくくり、カーニーの末路を暗示する、という洒落た構成だ。ゴルゴにしてみれば「これを言うためにここへきただけなのに」ということだろう。

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野原 圭

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