この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第71巻収録。CIAのシムズは、ゴルゴによって自身の作戦を潰された過去をもつ。そのため彼は任務を終えたゴルゴを救出せず、危険地帯に見捨てる報復行為にでる。民間人の助けを得て脱出に成功したゴルゴは、続いてモスクワに仕掛けられたシムズの罠を逆手にとって、シムズへの制裁を加えることにするが……。脚本:北鏡太
執念深い男が灼熱の大地に仕掛けた罠
「部長はまだ恨んでるらしいぞ」「マジか。俺らにとばっちりが来ないといいけどな」「だよなー」CIAシムズの部下からはこんなぼやきが聞こえてきそうである。『真実の瞬間』でゴルゴに鼻を明かされた形になったシムズが、何と仕返しに作戦を利用してゴルゴをアフリカに置き去りにする。
そして舞台は酷寒の地ソビエトへ。社会主義計画経済の象徴として、ソフホーズ=国営農場、コルホーズ=集団農場として社会科の教科書に掲載されていたのはいつの時代までだっただろうか。そのソフホーズで政権内の権力闘争とアメリカの陰謀が交錯する。
怖いもの知らずの危ない奴ら
『最終兵器小惑星爆弾』で銃職人のデイブが「相手の怖さを知らないってのは恐ろしいもんだね」と言っているが、ゴルゴの怖さを知らない人々には時々ひやりとする。『一年半の蝶』の坊やにも肝を冷やしたが、アフリカでゴルゴを助けた女性のボーイフレンドは、ゴルゴに「ぶっ殺してやる」と銃口を向けた。
彼女がゴルゴを助けたから、幸いぶっ殺されずに気絶させられるだけですんだが、真相を知ったらもう一度気絶するかもしれない。殴った男を、自分の代わりにベッドに寝かせて立ち去ったのは、ジェントルマンとしての彼女への礼儀だったのだろう。
判断の目を曇らせる負の感情
シムズはマイナスの意味で感情的な男であり、今回はゴルゴへの復讐の鬼と化しているため、輪をかけて負の感情に支配されている。カメラに映った銃がM16だからゴルゴに違いない、と思いこんでいるが、ソビエトの人間が、全員AF47を使用しているとは限るまい。
そのような短絡的な判断で、大統領にまで恥をかかせるような作戦部長では周囲が迷惑する。CIAは、案外ゴルゴの仕事に感謝しているのではないだろうか。ただし、次回依頼時には、ウガンダからの交通費とお詫び、今回の手間賃を、倍返しにして上乗せしなければなるまい。
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野原 圭
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