この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第71巻収録。州知事選挙の最中、知事候補筆頭のパイン候補が爆弾テロに散った。パインの息子・シオンは父の対立候補であったマンソンの謀略によるものだと直感する。シオンはゴルゴにコンタクトを取ることに決め、その報酬を捻出するために“ある計画”を実行する……。
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伏線回収の美しさもアクロバティック
大人から子供までを魅了し「趣味の王様」とも言われる切手収集。1960~70年代には『オバQ』『サザエさん』『ドラえもん』といった漫画でも取り上げられており、当時の子供達には馴染み深い趣味だったことがわかる。
本話のシオン少年ほどではなくとも、昭和生まれの人なら一度は経験したことがあるかもしれない。そんな切手収集がテーマとなる本話は、キーアイテムの「アクロバット切手」と、ゴルゴが複葉機でアクロバット飛行をしながら標的を狙撃するラストが重なり、芸術的な美しさを見せている。タイトルも含めた伏線の妙を楽しめる一作だ。
少年の復讐劇を支えた頼もしい黒人家政婦
シオン少年が主役といえる本話だが、隠れたMVPはなんといっても家政婦のジーナだろう。最初はシオンのやんちゃぶりに手を焼くおばさんという印象で、まさか彼女が物語のキーパーソンになるとは誰も思わない。が、実は彼女、ゴルゴへの依頼歴があり、コンタクトの方法を知っている「大物」だったことが中盤で明らかになる。
「復讐をしましょう、坊ちゃん」とシオンを駆り立て、車椅子の彼を支えてその後の計画にも同行するジーナの姿は、頼もしいの一言。ゴルゴの成功を見届けた際にはシオンと一緒に泣いており、読者の感慨もひとしおだ。
今も世界の注目を集めるアクロバット切手
本話に登場した1818年発行の逆刷りエラー切手は、「宙返り24セント」や「逆さのジェニー」と呼ばれ、現実にも切手コレクターの垂涎の的となってきた。
作中では12万ドル(1986年当時で約2000万円)でシオンが落札しているが、2005年にはこの切手のプレートナンバー付き4枚ブロックがオークションに出品され、297万ドル(約3億円)の値が付いている。また2016年には、盗難に遭ったこの切手が61年ぶりに発見され、所有者の元に戻されるというニュースも(※)。伝説の「アクロバット」は今も世界を飛び回っているのだ。
※出典:DAILYSUN NEW YORK『「逆さのジェニー」61年ぶりに発見 盗まれた逆刷りエラー切手 』2016年6月3日
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東郷 嘉博
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