この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第173巻収録。80年もの歴史を誇るロシアの遺体保存技術を題材にした一編。2004年にレーニンの遺体を安置する「レーニン廟」で起こった警備員失踪事件。この事件を追う新聞記者のナターシャは、この事件にゴルゴが関与していた事を突き止める……。脚本:横溝邦彦
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使い捨てカイロを武器にロシアに出現
ゴルゴと銃は切っても切れない相棒なのだが、今回のようにミッションによっては丸腰で敵地に侵入しなければならないこともある。合法的に持ち込むことができていざというとき武器になる、それは冬には欠かせない使い捨てカイロだった。
カイロの中身は鉄粉やバーミキュライト等だがマグネシウムを使用していた時期もあり、薬品と混ぜれば化学反応が起きるのはうなずける。この依頼は一風変わっていて、生き続ける遺体に「死」という永遠の休息を与えて欲しい、ということだった。レーニンの遺体は果たしてどうなったのか、興味は尽きない。
日本にエンバーミングは根付くのか
冒頭、日本の葬儀社がカフェルニコフから受けている遺体のエンバーミングの詳細な解説がなかなか面白い。日本では「死」は忌むべきもので、土葬が一般的な時代から、あまり長い時間死者と過ごす習慣はない。それは高温多湿という気候風土の影響もあるかもしれない。
最近都会の火葬場での葬儀は流れ作業のようだし、家族葬が圧倒的に増えいていて、地方の葬祭場も家族葬向けのしつらえに変更が相次いでいる。だから作中の葬儀社の人間が言うようにエンバーミングをしてまで長くお別れしたいというニーズが高まるというのは微妙かもしれない。
ジャーナリズムは命がけ
長い歴史を持つロシアのエンバーミング技術やレーニンの遺体など、興味を引かれる内容だったが、やや残念だったのは、ゴルゴが、黒縁めがねに工事用作業服という、何とも垢抜けしない変装スタイルでしか登場しないことだった。
ラストでナターシャを救ったことに、彼女自身は自分に「貸し」を作るためと考えているようだが、あの状況を放置すれば、ゴルゴ自身がナターシャ殺害の容疑をかけられる可能性がありそれを避けるためとも考えられる。彼女が語る経験からロシアにおいてジャーナリストは命がけの職業であることを実感させられる。
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野原 圭
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