この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス未収録作品。スペインはアンダルシアで建設大臣の狙撃事件が発生。犯人は袋小路の村へと逃げ込んだため確保は時間の問題と思われたが、忽然と姿を消す。一体、犯人はどのような逃走ルートを用いたのか? 女刑事・クリスティナの執念の追跡がはじまる…。脚本:氷室勲
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まさに“藪の中”
サブタイトルから芥川龍之介の短編小説『藪の中』を思い浮かべた人もいるだろう。今昔物語集を元にした『藪の中』では、平安時代に起きた一つの事件を複数の証言で浮かび上がらせるような、逆に複雑にさせるような内容となっている。まさに“藪の中”だ。
本作の発端はスペインの片田舎で起きた大臣の狙撃事件。それを担当した女性捜査官クリスティナ・アリアスが関係者に事情を聴取することで話が展開していく。3日経っても解決しない状況に、クリスティナらは9人から証言を聞き直したものの、狙撃犯の正体も行方も“藪の中”となってしまう。
丁寧で入念なアプローチ
『最後の戦場』で万が一の救援ルートを確保するため、複数のスタッフを少なからぬ報酬で長年キープし続けているように、ゴルゴは事前準備を怠らない。
本作で脱出ルートを確保するゴルゴは高額の賄賂を渡しただけでなく、さらに老女にはネックレスと日本への旅行券、俳優には有名プロディーサーへの顔つなぎ、離婚でもめている警備責任者にはやり手弁護士など、心憎いまでのアプローチを行っている。もちろん想定外の事態が起きることもあるが、その時はその時としてゴルゴは悠々と対処する。『蜘蛛の糸』でカンダタが再び地獄へと落ちたのとは対照的に。
あと一歩届かなかった警察
おそらく依頼に応えるための狙撃場所から脱出するため、ゴルゴが起こさせた交通事故。95%以上はシナリオ通りに進んでいた。ただしどんなに下準備をしても想定外の事態は起こる。
芥川龍之介の小説『犬と笛』では3頭の犬が主人公のきこりを助けるが、本作では狙撃事件直後に放たれた3頭の警備犬がゴルゴが着ていた上着の左袖を食いちぎっている。上着の断片を入手した警察は、残された臭いを犬に追わせているものの、残念ながら手掛かりは得られていない。もしその犬に交通事故現場を嗅がせていたら、もう一歩ゴルゴに迫れていたかもしれない。
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研 修治
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