この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第25巻収録。アングレーム町長夫人のダニエルは娼婦をしていた5年前、ゴルゴと“ある秘密”を共有していた。それから5年後、町のパーティーで偶然ゴルゴと再会したダニエルは、ゴルゴが“ある秘密”をネタに恐喝してきたと勘違いする。ダニエルを守りたい町長のバルドーは殺し屋を雇い、ゴルゴの抹殺を指示するが……。
スポンサーリンク
登場人物がみんな不幸になる悲劇
悲劇である。登場人物みんなが不幸になる悲劇である。せっかく手に入れた町長夫人の座を3年で失い、命も失う悲劇である。悲劇であるが、結局のところ町長夫人ダニエルの独り相撲である。また自らは命拾いしたものの、最愛の妻を失い政治生命は立たれるであろう町長にとっても悲劇だ。
町長にゴルゴの追い出しを依頼された男たちの唯一の生き残りも失禁させられて生き恥をさらしているし、生き残ったものも死んだ者も悲劇だ。もちろん、せっかくの休暇をフイにさせられたゴルゴが悲劇の最大の被害者である。さすがに不憫に思える。
休暇を取るたびに邪魔が入る
休暇をフイにさせられたゴルゴであるが、実は休暇を取るたびに邪魔が入る。『PRIVATE TIME』では診療船で休暇がてら徹底的に肉体の検診を行っていただけなのに、FBIのブラウニー捜査官に目をつけられる。『禍なすもの』では小型原子炉を背負ったソ連工作員がゴルゴの別荘に迷い込んできてしまう。
しかもその追手が落下傘でやってきてしまうので、日が傾くころに休暇切り上げになってしまっている。それに比べると今エピソードでは日中ゆっくりしてバーで一杯ひっかけているので休暇の1日を全うできたようである。一夜明けて悲劇に巻き込まれるのだが。
寛容さが不思議な後味を残す
危機に際して町長の取った手段の是非は置いておくとしても、ゴルゴの追い出しを依頼した先が頂けない。いかにもチンピラ風の三人組で、町長とは初対面の初取引である。品もよくない。ゴルゴのレベルを判断できていたなら、決してこんなことにはならないだろう。政治家として人を見抜く目がなかったということだろう。町長のスケールの小ささが顕わになってしまった。
むしろ夫人のダニエルが依頼した殺し屋の方が能力が高そうなのも皮肉である。チンピラ三人組を送り込まれた後でもゴルゴは町長夫妻を許そうとしており、その寛容さが不思議な後味を残している。
この作品が読める書籍はこちら
片山 恵右
最新記事 by 片山 恵右 (全て見る)
- ゴルゴ13:第211話『AZ4 CP72』のみどころ - 2021年11月14日
- ゴルゴ13:第410話『イリスク浮上せよ』のみどころ - 2021年6月11日
- ゴルゴ13:第283話『未来への遺産』のみどころ - 2021年5月20日