この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第178巻収録。5人組による銀行強盗が発生。逃走の途中で犯人の一人が射殺された。射殺された青年バーニーの父親は、息子を悪の道に引きずり込んだ不良仲間の抹殺をゴルゴに依頼する。しかし、3人まで抹殺したゴルゴは、最後の一人の始末は延期すると依頼人に告げるのだった。
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マリア像のペンダントが紡ぐ物語
今エピソードはマリア像のペンダントが12年の時を紡ぐ美しいヒューマンドラマである。12年後、空港ロビーで起きた偶然の邂逅にさすがのゴルゴも驚きを隠せない様子だ。ゴルゴのことだから、ペンダントとそれを身に着ける少年のことを瞬時に理解したのであろう。
とは言え、さすがのゴルゴも感慨ひとしおであったのではないか。珍しく二度見をしてしまっている。ロビーを後にして機上の人となったゴルゴの胸に去来しているものは何か。今エピソードと同様に、ゴルゴは『ジンネマンの1時間』でも新しい生命の誕生を待ってから仕事をしている。
マリアとミダス王の再生物語
見方を変えれば今エピソードは、マリアとミダス王(バーニーの父親、モースの祖父)の再生の物語である。厳格過ぎて後継者育成に失敗して、おそらく人生で初めて挫折を感じたミダス王。安っぽい銀行強盗をはたらく、どうしようもないギャングの一員であったマリア。
バーニーの死とゴルゴの執行猶予により、二人がそれぞれ人の心を取り戻す。ミダス王は孫のモースに適度な距離感で接することができていて安心だし、マリアは死後の肉体を医療提供することで罪を償ってもいる。何より、覚悟を決めて夕日の丘でゴルゴの銃弾を待つ姿が神々しい。
もっともマリアの名前が相応しいマリア
マリアという名前はもともとスペイン語圏で多く用いられる女性名であることから、ゴルゴの登場人物にもマリアの名を持つキャラクターが多数存在する。一例を挙げるにとどめるが『ラ・マニョ・ディアス』や『一年半の蝶』『黄金の男』など本当にキリがないくらいだ。
しかしながら今エピソードのマリアほど、“マリア”の名が相応しい登場人物はいない。ペンダントはマリア像、マリアが倒れた時に助けられた先は修道院である。さらにバーニーの父親にとっては、奇跡的にバーニーの一粒種モースを残してくれた聖母的な存在である。
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片山 恵右
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