この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第10巻収録。前話からの続編。毒ガステロを目論むネオ・ナチスの狂人、ワルター・フォン・オーベルトとの激闘が続く。ゴルゴから情報を盗むため差し向けられた女諜報員・ヒルカから、逆に情報を聞き出したゴルゴは、相手陣営の秘密基地に潜入。ついにオーベルトとの対面を果たす……。一個小隊分の武器を投入したゴルゴの攻撃は圧巻の一言。脚本:K・元美津
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描かれるゴルゴの怒り
本作のみどころはズバリ、ゴルゴの怒りだろう。前作『リオの葬送』でのパートナー、マイヤに対する敵の非道な仕打ち。一瞬動揺したゴルゴだが次のコマでは平静を装ってその場を立ち去っている。
しかし内心は穏やかでなかったようだ。当てつけにも思える仕打ちを敵の女スパイに行うことを皮切りに、1個小隊と勘違いされるほどの苛烈な襲撃。基地内で愛人との情事を終えた敵将校に鉢合わせした際は問答無用で射殺。その愛人も用済みとなると射殺する等々、彼の怒りは収まることを知らない。黒幕と対峙した際も防弾ガラスに体当たりしてでも逃がすまいとするゴルゴの静かな怒りに注目だ。

ヒルカとマイヤの対比、黒幕初登場
本作では新たに登場する美女・ヒルカと、前作までの相棒・マイヤの対比に注目だ。冒頭から敵のスパイであることが明確に描写されているヒルカと、前作のマイヤとの対比が上手くできている。勧められた食事や酒に対するゴルゴの対応、「超一流のテクニック」の使い方、そしてその結末がまさに因果応報。『リオの葬送』と読み比べるとゴルゴが情事を回想するシーンすら当てつけになっているのが面白い。
また本作のポイントとしてこのシリーズの黒幕が初登場するのも見逃せない。ゴルゴと対面して無事逃げおおせる強かさを持ち、次作『ラ・カルナバル』では文字通り“命懸け”でゴルゴと一対一の闘いを挑む傑物だ。
結末は興奮の次話へ!
本作のストーリーは前作『リオの葬送』で怒り心頭になったゴルゴと読者を鎮めるために作られたとしか思えない構成だ。「目には目を、歯には歯を」的なゴルゴの行動。その後の「フル武装ゴルゴ」によるド派手な暴れっぷりに、マイヤへの思い入れがある読者ほどスカっとできる作品となっている。
その後の黒幕との対決における危機一髪の展開も見逃せない。指令室を防弾ガラスによって予め仕切りを作っておくほどの用心深さを見せる黒幕に、さすがのゴルゴも歯が立たず窮地に追い込まれてしまう。そんな状況をゴルゴがどうやって切り抜けるのか、最後まで目が離せない作品だ。ちなみに防弾ガラスによるゴルゴ無力化は『査察シースルー』でも行われている。あわせて読み比べるとよいだろう。

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小摩木 佑輔

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