この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第169巻収録。CIAのテロ分析室はゴルゴの行動パターンを分析し、ゴルゴ抹殺にむけた極秘作戦を展開。しかし調査をおこなうテッドとマシューが、何者かから警告ともとれる狙撃をうける。さらには計画の発案者であるレッド副所長が射殺されてしまい……。
頭の使いどころを間違えた男の話
入試のカンニング事件など、世の中不正や犯罪は後を絶たないが「それだけの周到な計画を練る知恵と労力があるならもっと別のところに使えばいいのに、頭の使い道を間違えている」と思うことがよくある。
このグローバーもゴルゴを利用しようなどと『真実の瞬間』のシムズ同様、頭の使い方を間違えた一人だ。『心霊兵器』でCIAに「悪魔も撃ち抜く男」と評されたゴルゴがむっとした表情で相手を睨む場面があったが、その表情からは「俺にしてみればお前たちこそ悪魔の巣窟だ」と言っているようで、今回はまさにその悪魔が撃ち抜かれたのだ。
モニター越しの美男美女にはご用心
局員のマシューが、グローバーのトリックにだまされる場面があるが、今では写真一枚あれば、特殊なソフトウエアを使って自分の表情と同じように、写真の顔を動かすことができるらしい。だから、誰でもブラッド・ピッドやジョディ・フォスターになって、ビデオ通話ができてしまう。
この機能を悪用して有名人になりすまし、SNSを通じてメッセージを送り、大金をだまし取る詐欺のような事件が急増しているそうだ。しかも、事件が国をまたいでいると捜査は困難をきわめる。一度ゴルゴになりすましてみたいが、命が惜しいのでやめておこう。
グローバーの決定的な失策とは
グローバーは、人を騙し、操ることには長けていた。優秀な若手を、やりがいのある極秘の任務という名目で自分の手先として利用しようとした。マシューはやや誤算だったが、その戦略と人選はある程度成功したと言って良い。だが、彼はエージェントとしては失格である。
ゴルゴへの偽の依頼の際『遺作』のエレナと同様のエラーを冒している。ゴルゴの言葉通り「俺に依頼するときは最後の最後のとき」という万策尽きたふりもせず、すぐにあきらめてしまった。もっともあの鋭い目の男の前からは、一刻も早く立ち去りたい気持ちは理解できるが。
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野原 圭
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