簡単なあらすじ
SPコミックス第113巻収録。政権の崩壊で軍を追放されたソ連の元特殊部隊員・マルコフ。彼は軍から横流しされたウラニウムを小国へ売りつけるため、国境を目指していた。国境地帯では文豪にしてハンターでもあるガードナーが、幻のアムール虎を仕留めるドキュメンタリー番組を録画中で、マルコフはこの撮影クルーに扮して国境を目指そうと企む。
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寓話のようなラスト
このエピソードのラストはなかなか印象深い。傲慢なアメリカ人ハンティング作家と、カネに目がくらんだテレビマンがそれぞれの仕事道具を投げ捨てたまま深いタイガに迷い込む。
パニックにおちいったふたりと、アムール虎の咆哮で物語の幕が閉じる。はっきりと行く末が描かれないラストはゴルゴ13では珍しいだろう。愚か者たちの行く末を暗示する、寓話めいた終わりとなっている。

プロは焦りを表に出さない
依頼のタイミングが遅かったのか、ゴルゴが珍しく「明日の昼までに追いつけるか……ぎりぎりだな……」と時間に追われている様子の独白がある。しかしこの独白の瞬間も、当然ながら冷汗一つ見せない。
常人であれば間違いなく焦る場面だし、感情が乱れたとしても、むしろそちらが普通だろう。ただ、焦りが手元を狂わせるのも道理なのだ。いつでも平常心で居られるゴルゴ、見習いたい。
東洋のごく小さな国
ゴルゴ13は朝鮮半島、特に北朝鮮を舞台にしないというのはファン諸兄なら既にご存知のはずだろう。明確なルールがあるわけではなく、あくまでさいとうたかを氏の配慮だということなので、今後どうなるかは判らないが、少なくとも今までは無かった。
しかしこのエピソードは1995年公開にも関わらず北朝鮮を匂わせる“東洋のごく小さな国”が相手だというセリフがあり、ターゲットの取引相手らしき人物の姿も描かれている。毛皮のチョッキを着た取引相手がどこから来たのかまでは結局描かれなかったが、この点も珍しいと言えるだろう。

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大科 友美

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