この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス未収録作品。2021年、ドイツ西部を襲った大水害で家と家族を失ったべーム。妻子を守れなかったことを悔やむなか、被災地を訪れた州知事・オシェットが心ない言葉を浴びせる。政治的な不手際や失言に怒りをおぼえたべームは、オシェットに天誅をくだすことを決意するが……。
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約50年ぶりの巨大水害
2021年7月にヨーロッパを襲った大洪水。ドイツやベルギーを中心に死者は約200名にも及んだとのこと。これは1962年にドイツ北海岸を襲った嵐により約300人が死亡した洪水以来の大きな被害で、比較的自然災害が少ないドイツにとって衝撃的な出来事だった。
この時、いち早く現地を視察したのがドイツ北西部にあるノルトライン・ヴェストファーレン州の首相であるアルミン・ラシェット。ラシェットは支援を約束した一方、合間に談笑する姿がテレビカメラに映り批判をあびた。本作でゴルゴのターゲットとなるテルミン・オシェットのモデルだ。
最高権力者からの辛辣な警告
『国王ゴードインの依頼』『神の眼力』など、最高権力者からの依頼もあるゴルゴ。本作ではドイツのアンゲラ・メルケル首相がモデルのケルメル首相が依頼人。何気に配慮したのかターゲットの殺害ではなく警告をゴルゴに頼んでいる。もっとも辛辣な警告は実に痛々しいもので、ぜひ本作を読んで欲しい。
なおメルケル首相はワールドカップに政府専用機で乗り込むほどサッカー好き。本作のケルメル首相もスタジアムのVIP席でゴルゴに会っており、歓声に気を取られて、「そろそろオレへの依頼を聞こうか」とゴルゴに促される面白い場面もある。
ウクライナ戦争への伏線か
本作の途中、ゴルゴが在ベルリンロシア大使館の門前でロシア大使館員を狙撃する光景が描かれている。依頼の終わったケルメル首相から、それをもみ消した旨の発言があるものの、ゴルゴは無言で部屋から出て行っている。本作の流れとは全く関係ないように思えるのだが、何かの伏線だろうか。
本作から約半年後の現在、ウクライナにロシアが攻め込んだのは周知の通り。過去には『覚醒・クーデターの謎』『アナライズ・ウクライナ』など、ウクライナを舞台としたシリーズもある。ウクライナ戦争の陰で活躍するゴルゴの姿が見られるのかもしれない。
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研 修治
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