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簡単なあらすじ
SPコミックス第97巻収録。ゴルバチョフ政権下、政府から危険人物とみなされウクライナに左遷となったソルコフ大佐はクーデターを画策していた。一方、同じくウクライナに左遷された通信兵・ニコライは、旧友ナーシャから“あるサークル”への参加を求められる。そこでニコライは自分の一族についての秘密を聞かされるのだった……。
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クーデターの裏側で暗躍する
1991年に起きたソ連8月クーデター。共産党勢力などの保守派が、ゴルバチョフ大統領らによる改革・開放路線の巻き返しを狙ったもの。ただしクーデターが早期に失敗となっただけでなく、ボリス・エリツィンの躍進にもつながり、さらに改革路線が早まった皮肉な結果となっている。
本作ではエリツィンから依頼を受けたゴルゴが、クーデターのキーパーソンとなるソビエト軍のソルコフ大佐を暗殺していたとの筋書きになっている。報酬はトランクいっぱいの札束。ルーブルではないとのことだが、ではアメリカドルかユーロか、それとも円だったのか。
カムウィク人に間違われたゴルゴ
本作のゴルゴは猟師の格好で登場し、カムウィク人に勘違いされている。カムウィク(カルムイク、カルミックなどとも表現)人はモンゴル系に属しており、肌の色や顔つきなど外見は日本人とよく似ているところがある。
また遊牧民でもあった祖先がチベット仏教を信仰していたことから、現在カスピ海の北部にあるカルムイク共和国では仏教徒が多い。『血液サンプルG』ではGm(ガンマグロブリン・マーカ)型の分析から蒙古系と判断されたゴルゴのルーツがある。カムウィク人と見なしたのは、当たらずと言えども遠からずだったようだ。
ゴルゴにナイフを投げる愚
ウクライナの英雄の孫であるニコライを連れまわすナーシャ。逃亡の中でニコライを覚醒させようとするものの、「僕にいったい何をさせようというのだ?」とニコライに聞かれて、「それは、あなたが考える事よ」と突き放している。
ゴルバチョフに恨みを持つ口調から保守派(共産党)らしいものの、ゴルゴですら、「何者だ?」と尋ねるくらい正体不明だ。当時の複雑な東側諸国では自分の立ち位置をはっきり説明できる人が少なくても当然か。最後はゴルゴにナイフを投げて射殺されるのだが、無駄な殺人はしないゴルゴ。何もしなければ生き残れたかもしれない。
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研 修治
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