この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第180巻収録。考古学会の名門・ウェザー家の跡取り・マーチンは、世紀の発見といわれるクフ王の棺発掘に失敗。その直後、クフ王ピラミッドのキャップストーンを発見し、汚名挽回を果たす。しかし、このキャップストーンにはある秘密が隠されていた……。脚本:原田学
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エジプトの謎を意にも介さないゴルゴ
『死の翼ふれるべし』や『スフィンクスの微笑』など、エジプトが舞台の名エピソードは数々あるが、今回はずばりギザの大ピラミッドが主題。事情通の老人の手引きで、考古学者も知らないピラミッド内部の通路を狙撃に利用する展開は、虚実を取り混ぜた本作ならではの外連味といえるだろう。
老人の孫娘らしきサラの、ゴルゴに思いを寄せる姿も印象的。舞台がイスラム圏でなければ、情熱的な一夜もあったのかもしれない。別れ際の彼女の涙もまた、「大ピラミッドの謎の答え」と言われる壁画と同様、ゴルゴには「関係のないもの」なのだろうが……。
考古学に人生を捧げた一族の悲哀
キャップストーンの捏造を巡り、考古学者の祖父と孫のドラマが描かれる本話。ゴルゴに合図を出すことで自ら孫に引導を渡し、後に自らも命を絶ったウェザー卿の悲哀はもちろん、マーチンの助命を願っていた従者のトムソンの涙も忘れられない一コマだ。責任や忠誠心を重んじるイギリス人の精神が強く表れたエピソードだろう。
余談だが、本作の3年後の2012年には、エジプトの砂漠で第二次大戦期のイギリスの戦闘機が「発掘」され(※1)、「航空の世界ではツタンカーメン王の墓に匹敵する発見」と話題になった。偶然にしても驚かされるばかりだ。
今なお謎に包まれた古代の真実とは……
考古学分野での捏造といえば、杉森氏の解説にもある日本の旧石器捏造事件が真っ先に連想されるが、海外でもそうした事例が無いわけではないらしい。2018年には、トルコの遺跡からの出土品の一部について、偽造の可能性が浮上して話題になったことがあった(※2)。
エジプト考古学に関しては、軽く調べた限りでは捏造の話は出てこないが、ピラミッドが今なお多くの謎に包まれているのは間違いない。何しろ、それが王の墓だったか否かすら定説は定まっていないのだ。我々が当たり前に信じていることが「嘘」だったという可能性は、常にあるのかもしれない……。
(※1)出典:ナショナルジオグラフィック「サハラで発見、2次大戦の英軍戦闘機」(2012年5月25日)
(※2)出典:GIGAZINE「有名考古学者が遺跡からの出土品を偽造した証拠が死後に発見される」(2018年3月14日)
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東郷 嘉博
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