この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第68巻収録。返還後の香港経済を壊滅させるため、香港経済を左右する大物企業ばかりを買収する謎の企業キング・ベッカー社。その黒幕が香港五大財閥のトップである王一族の当主・王虎令であることを突き止めた北京政府は、王虎令暗殺のため腕利きの狙撃メンバーを召集する。
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香港返還をめぐる生々しい思惑の交錯
香港返還をテーマにしたエピソードには『返還前夜』や『14Kの謎』などがあるが、本話はそのはしりであると同時に、香港を直接舞台にしているという点で「王道」とも言える一話である。
返還間際の香港を巡る中国やアメリカ、そして当の香港財界の、表のニュースには表れない思惑の交錯が生々しく描かれていて興味深い。
香港側の黒幕である王虎令の筋書きは、香港を経済的に魅力のないスラム街にすることで中国に干渉を断念させようという大胆なもの。本末転倒のようにも思えるが、それでも故郷の独立を守りたいのが愛国心なのかもしれない。
王虎令のしたたかな生き様と潔い散り際
本話の魅力は何といっても、香港財界の黒幕であり、今回のゴルゴの標的でもある王虎令の人となりに尽きるだろう。
表向きは中国に協力的な姿勢を見せながら、裏ではキング・ベッカー社を率いて企業の買収を進めていく彼の姿は、香港という地域のしたたかさを体現しているようでもある。
ラストではゴルゴに狙われていることを知り、部下を逃して自ら窓際に立ち死を受け入れるという、潔い散り際を見せる王。ゴルゴも彼の思いを汲み取っていたのか、「再見(さらば)、わが故郷香港」という最後の言葉を読唇術で読み取ってから狙撃しているのだ。
摩天楼を舞台に炸裂するゴルゴの空中狙撃
中国側の刺客よりも先に王虎令を始末するという依頼を受け、CIAのヘリで摩天楼のど真ん中に乗り込むゴルゴ。
中国側の狙撃手らを瞬く間に片付けるアクションが見所だが、へりのキャビンから飛び降り、着陸脚に片手でぶら下がって狙撃する手腕には、味方のパイロットさえも驚愕の表情を浮かべているのが面白い。
さらに、ビルの屋上へと飛び降りながら、残った敵の一人を始末。この最後の一人は若い女性の狙撃手で、二千名の隊員から選ばれたということだから腕は確かなものだったのだろうが、いかんせんゴルゴ相手では分が悪すぎたようだ……。
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東郷 嘉博
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