この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第26巻収録。反政府ゲリラに両親を殺された過去をもつ修道女・テレシタ。ゴルゴの依頼主はテレシタが師事するオーハラ神父で、「テレシタの両親の仇をとってほしい」というものだった。しかしテレシタは、オーハラ神父に対し「そんなことは止めてほしい」と懇願するのだった……。脚本:岩沢克
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殺されることを望みながら謎の抵抗も……
実は依頼者のオーハラ神父こそがゲリラの首領であり、贖罪のためにゴルゴに殺されることを望んでいたという驚愕の真相が明かされる本話。それなのに手下にゴルゴを襲わせるなど、不可解な行動が多い彼だが、杉森昌武氏も文庫版の解説で述べるように、人間の中にある多面性は簡単には割り切れないものなのだろうか。
中世では、熱湯に手を入れて火傷の痕が綺麗なら無罪とか、パンを飲み込んで苦しまなければ無罪といった形で神に審判を委ねる「神判」というものがあったが、オーハラ神父もゴルゴへの依頼を通じて神に生死を委ねたのだろうか……。
洞察力で敵の包囲網から脱出するゴルゴ
多くのゴルゴファンが本話の見どころとして挙げるのが、「鳥かご」と呼ばれる木の檻からゴルゴが力技で脱出するシーン。「鳥かご」の破壊自体はいつでも可能だったわけだが、見張りの二人が呑気に女の話などしているのを見て、今なら行けると確信したのだろう。
単なる身体能力だけではなく、ゴルゴの鋭い状況把握能力が光る場面だ。ところで、ゴルゴは自分を敵に売った船頭の男を敢えて一度見逃し、協力を引き出した直後、さらに二度目の裏切りに遭っている。ゴルゴ的にはそれもお見通しだっただろうが、十中八九あの男の命はないだろう……。
法の裁きだけが罪の償い方ではない?
オーハラ神父の贖罪が描かれる本話だが、2016年には、中国の殺人犯が逃亡先で僧侶に姿を変え、寺院の院長にまでなっていたという、本話を彷彿とさせるニュースがあった(※)。この人物も善行が板についたのか、寺院の修繕や孤児の支援を行い、周囲から高く評価されていたという。
罪を償わず逃亡するのは勿論悪いことではあるが、見方によっては、彼らは法の裁きを受けるかわりに自らに贖罪を課したのだとも言える。宣教師として現地の人々に慕われていたオーハラ神父に関しても、正規の刑罰よりよほど有益な罪の償い方だったのかもしれない。
※出典:AFPBB News『16年前の殺人事件容疑者を拘束、寺院で僧侶に 中国』2016年8月31日
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東郷 嘉博
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