この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第3巻収録。3年間の捜査でゴルゴ13のことを詳細に調べ上げたICPOのバニングス刑事。ICPOはこの捜査情報を使ってある計画を実行。それは偽の依頼でゴルゴをおびき出し、狙撃の瞬間を現行犯逮捕しようとするものだった。おとり捜査に猛反対したものの、聞き入られなかったバニングスは刑事の職を辞し、単独でゴルゴに勝負を挑むのだった……。脚本:小池一雄
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ゴルゴの用意周到さに脱帽
この記事では作品中のゴルゴ自身のみどころ、その他の登場人物のみどころ、ストーリー構成のみどころと、注目点を3つに分けてご紹介したい。まずゴルゴ自身のみどころは彼の用意周到さである。物語の主軸はゴルゴを逮捕するための囮捜査をベースに進むのだが、それを最初から見破っているゴルゴの準備っぷりが半端ないのだ。狙撃は自動で発砲するように仕組まれた銃で行った上に『バラと狼の倒錯』でも活躍した嘔吐ガスの罠まで仕込む念の入りようである。
もうひとつは本作での強敵・バニングス戦後の立ち振る舞いだ。バニングスとの決闘で心動かされたゴルゴは、彼に敬意を表し証拠のテープを焼く。常人では最後まで命を狙ってくる男に対し、そこまで優しくは振舞えないだろう。これによりゴルゴの度量の広さを推し量ることが出来るエピソードとなっているのだ。
タイトルにもなっているバニングスのみどころ
登場人物で注目したいのは登場して早々にICPOを辞めるという型破りな男にして、本作のタイトルにもなっているバニングスだ。バニングスは3年に渡りゴルゴを逮捕するために調査を続けてきた生粋の刑事。
彼の調査結果から囮捜査を行おうとする組織の上層部に「やつはぜったいひっかかりません!」と読者の想いを代弁するかの如く捲し立てるなど、本作の登場人物の誰よりもゴルゴに精通した男である。そんな彼が遂にはゴルゴと対峙し1対1での対決になるのだが、彼の真骨頂はその対決の結果だ。ゴルゴの心さえ動かした猟官・バニングスの生きざまを是非本作で確認してほしい。
組織と一匹狼の対比に注目
ストーリー構成のみどころとしては、組織の決定した作戦の顛末とそれに従えず一匹狼となったバニングスの末路だ。作戦の顛末は大方の読者、そしてバニングスが予想したかのように失敗に終わり、ゴルゴの逆襲を許す事態に陥ってしまう。読者目線からするとゴルゴに精通したバニングスの進言を受け入れなかった組織が、逆に窮地に立たされることで留飲が下がる思いだろう。
結局、バニングスがゴルゴと果し合いを行うことで組織を窮地から救うことになるわけだが、一匹狼になってもなお組織に尽くす展開こそが本作最大のみどころといえる。また1対1の果し合いは『南仏海岸』『インディアン・サマー』等でも見られるが、本作の結末はそれらと一線を画したものになっている。それがまた趣の深い作品に仕上がっている理由でもあるだろう。
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小摩木 佑輔
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