この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第3巻収録。前話からの続編。強大な権力をもってスイス銀行を動かし、ゴルゴの命をねらった虫(インセクト)。ケンカを売られたゴルゴはその場で全財産を銀行から引き上げ、乾坤一擲の大勝負にでる。個人で飛行機を3機購入、数十人規模の俳優・エキストラの雇用など、桁違いのスケールに度肝を抜かれる一編。
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情熱的なゴルゴに注目
本作のみどころはゴルゴが自身の命を狙うものを炙り出すため、自身の全てを賭けると胸中で誓いを立てる熱いシーンだろう。その誓いに違わず600万ドルを用いての戦闘機2機、旅客機1機、その搭乗員とエキストラを準備するほどの策を弄するのだ。
ゴルゴ自身も富豪の装いで繰り出し、丁寧な口調で話す彼にこれから何が始まるのかワクワクすることだろう。ちなみに映画の撮影と称して準備を進める点などは傑作『崩壊 第四帝国 狼の巣』を連想させるが、本作は初期の作品であるため最近の寡黙なゴルゴとは一味違った印象を楽しむことができる。
魅力的な登場人物達
魅力的な登場人物が多いのも本作の特徴。一人目は冒頭から一方的にしゃべり倒すスイス銀行の頭取だ。1ページ延々と自分語りをし、次ページでゴルゴに「年をとったな……」と諭される姿が滑稽で面白い。
二人目は『狙撃のGT』でゴルゴ用にカスタマイズしたアンシュッツを準備した武器屋の爺さんだ。本作でもゴルゴからの無茶ぶりに冷や汗を流し、「一体何をやらかすつもりなんだ」という読者の気持ちを代弁してくれるキャラクターとなっている。三人目は物語の中盤から登場する黒幕だ。ゴルゴの仕掛けた突拍子もない罠と対峙して、どのような反応を見せるのかがこの作品のキモといえるだろう。
ゴルゴの全てを賭けた対決
本作は『ベイルートVIA』の続編となっているが、前作の潜入スパイ物と打って変わってゴルゴが映画監督さながらに舞台を作り上げ、黒幕を炙り出す独特なストーリー構成だ。
前半はゴルゴの視点で描かれる。ゴルゴとは切っても切れないスイス銀行が出てくる点や、全財産を賭けてスケールの大きすぎる罠を仕掛けるなど、初期作品のひとつの節目的な物語となっている。後半はゴルゴが仕掛けた舞台を読者が黒幕視点で体験できる構成となっており、一旦気持ちを切り替えて読むことでより作品を楽しむことが出来るだろう。
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小摩木 佑輔
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