この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第77巻収録。映画会社ユナイテッド・ムービーズは、社運を賭けた大作の制作を決定。その主演女優の座をめぐって人気女優のオリビアと、抜群の演技力を誇るナンシーが争っていた。次期社長の座を狙う副社長・カーターは、自分が推すオリビアに主演させるため、ゴルゴにナンシーの狙撃を依頼する。脚本:新井たかし
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オチが最後まで読めない物語
映画が題材と聞くと、ゴルゴが主役の映画を秘密裏に収録しようとする『配役』を連想するが、本作ではゴルゴが主役でもなければ、映画の収録自体も冒頭にオリビアの技術力の無さを表現するためだけに描かれるのみだ。
ではこの物語の大半は何をしているかというとナンシーとオリビア、それぞれの陣営が次の大作の主役の座を狙って奔走する姿を描いている。本作の面白さは結末、つまり主役の座が誰になるのかが最後まで分からないところだろう。オリビアとナンシーについては後述のとおりの性格なのでゴルゴがそのまま依頼をこなすのか、はたまた大どんでん返しがあるのか最後まで目が離せない作品になっている。
ナンシーとオリビアの確執
登場人物で鍵となるのは女優のナンシーとオリビアだろう。ナンシーは控えめだが演技力があり読者が共感できるように描かれている。一方のオリビアは演技力なし、性格も悪い、枕営業は得意と一切共感できないキャラクターだ。この二人のうち、どちらかを映画の主役に持っていくため両陣営がいろいろと画策する。
結局、「ゴルゴ13にライバルを消してもらう」という策に両陣営が辿りついたが、よりにもよってオリビア側の依頼が先に通ってしまうところが面白い。ナンシーとオリビアの迎える末路はぜひ作品を読んでみてほしい。
映画だから出来る狙撃を再現
本作のゴルゴは映画だからこそ出来る狙撃を現実で実現する。まず依頼場所は狙撃できるような適当な建物がない。それでも安心できないナンシー陣営は、狙撃シーンを撮るとしたら、どこから狙うかを映画監督に問う。監督は「高層ビルの屋上から真下に狙撃をする、頭だけしか見えないからターゲットを特定できないが、映画の主人公は不可能を可能にするから主人公だ」と言い放つ。
そしてゴルゴはある方法を用いてその映画の主人公通りの狙撃をしてしまうのだ。トリックの解説は最後に語られており「映画を現実にしてしまう男……ゴルゴ13………」とゴルゴにこの上なく相応しいセリフで幕を閉じる一連のシーンは最大のみどころだ。
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小摩木 佑輔
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