この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第87巻収録。新聞記者のチェザーレは、市長のバジーレが麻薬で得た金をバチカンに寄付することで資金洗浄していることを突き止める。チェザーレは証拠書類をバチカンのバッキス神父を経由して告発してもらおうとするが、バジーレは“ある事”を理由にバチカンを恐喝してくるのだった……。
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世界一小さい国、バチカン市国
子どものころ、「世界一小さい国はどこか?」というクイズを出されたことはないだろうか。「バチカン市国」と答えられれば鼻高々である。今エピソードはそのバチカン(市国)と南米麻薬犯罪組織との闘争だ。
犯罪組織としては資金洗浄がいつも悩みのタネであるが、病院建設と寄付をセットにした巧妙な手口を編み出したのはコロンブスの卵的なお見事な発想である。ただし天網恢恢疎にして漏らさず、神に唾する行為を神はお許しにならなかった。しかし真の巨悪であるバジーレ市長の命運が描かれていないのがもどかしい。
依頼人を盾にされても
バチカンの行政官として、また無念の死を遂げた兄を想う弟として複雑な心境に揺れるフェリーチェ。そのフェリーチェを盾にされても顔色ひとつ変えずにゴルゴはロングキルを決める。ゴルゴはやはりカッコイイ。狙撃の難度としてはそれほどでもないのだが、フェリーチェの依頼通り「相手を苦しませずに一発で天国へ送って」いる。
本作品は必要最小限にして、最大限にカッコよくゴルゴが描かれているエピソードなのだ。読者として注文を付けるなら、ネルビのような悪党は苦しませてからあの世に送ってほしかった。そう思うのは俗人と敬虔なクリスチャンとの人徳の違いか……。
合わせて読むなら『ビオ・グレゴリオ司教』
ゴルゴは世界各国の宗教に造詣が深く仕事上のつながりも多い。中でもカトリックの総本山バチカンと関係が深い。『ズドロナス・マリヨ』では法王パウロ2世を救っているし、『ペルセポネの誘拐』では情報を取得するためにバチカンのネットワークを利用して依頼を遂行している。他にもバチカンものは多く、その都度、多種多様なバチカンの関係者が登場するのも楽しい。
特に『ビオ・グレゴリオ司教』では、今エピソードのフェリーチェとは正反対なキャラクターが登場する。合わせて読まれることをお勧めしたい。読後の余韻をさらに大きなものにしてくれるだろう。
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片山 恵右
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