この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第174巻収録。中国財界の要人が立て続けに殺害される事件が発生。奇妙な事に二人とも伝説上の怪鳥「羅刹鳥」に襲われ、その鋭い爪で咽喉元を掻っ切られて死んでいた。調査の結果、被害者は”ある特殊ビジネス”で私腹を肥やす三人組のうちの二人であることが判明する……。
スポンサーリンク
伝説の魔物になぞらえた姉弟の復讐劇
伝説の怪鳥・羅刹鳥による連続殺人という、一見して荒唐無稽な事件の噂がまず目を引く本話。無論そんな魔物が実在するはずはなく、事件の真相は、臓器売買ビジネスに兄の命を奪われた王黄と庚の姉弟による、ウイングスーツを用いた復讐劇であったことが明らかになる。
ゴルゴもたまに用いる滑空手段だが、羅刹鳥に扮する庚は、なんと片足が義足でありながらウイングスーツで自在に飛び回れるまでに鍛錬を重ねている。一度は姉の身を案じて復讐の中止を進言しているのを見ると、彼を突き動かしていたのは、亡き兄よりも姉への思いだったのだろうか……。
誰も幸せにはならない復讐の連鎖
臓器売買に携わる役人達に復讐を果たしていく一方で、無関係の警備員までも殺害してしまった王姉弟。殺された警備員の息子が、羅刹鳥を名乗る下手人への敵討ちをゴルゴに依頼するのは、負の連鎖を感じさせて何ともやるせない。
それでも三人目の復讐が完結するまで庚を仕留めるのを待ってやったゴルゴと、それを察して彼に頭を下げ、ひとり死を選ぶ黄。王姉弟に、それこそゴルゴのような仕事人に復讐を依頼する財力がなかったのは致し方ないことだが、自ら手を染めなければ死ぬことはなかっただろうと思うと、居た堪れない幕引きである……。
厳しさを増す中国当局のネット検閲
中国当局がネットの検閲に力を入れていることは有名だが、本話では、ネットに蔓延する羅刹鳥の噂に苦心する検閲担当者達の姿が描かれている。党や役人が腐敗しているとの批判に繋がりかねないためだが、そうした意見を「ないもの」として握り潰してしまう姿勢はまさしくお国柄だろう。
元より、北朝鮮に次いで世界で2番目に報道の自由がない国とされる中国だが、2024年7月には、スパイ行為の疑いがあれば個人の携帯電話やパソコンを検査可能とする法令が施行され、また話題になったばかり(※)。かの国に旅行する際には十分注意したい。
※出典:NHK「中国 スパイ取締りで新法令 個人の携帯やパソコンが検査可能に」(2024年7月1日)
この作品が読める書籍はこちら
東郷 嘉博
最新記事 by 東郷 嘉博 (全て見る)
- ゴルゴ13:第541話『PTSD』のみどころ - 2024年9月16日
- ゴルゴ13:第613話『オープンダイアローグ』のみどころ - 2024年9月14日
- ゴルゴ13:第611話『逆心のプラントアカデミー』のみどころ - 2024年9月13日