この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第62巻収録。大司教・ヨゼフ枢機卿がアパルトヘイトへの抗議を理由に収監された。ヨゼフ解放に動いたビオ司教は、南アフリカ政府の資金源であるクルーガーランド金貨の大暴落を引きおこす。一方、ゴルゴはMRM(モザンビーク抵抗運動)に協力を仰ぎ、ある人物をマークするが……。脚本:工藤かずや
スポンサーリンク
何と言ってもビオ・グレゴリオ司教
バチカンを舞台にするエピソードは多く、バチカンの関係者はたいてい真面目で敬虔なクリスチャンとして描かれている。そんな中、今エピソードのビオ・グレゴリオ司教は異色のキャラである。
ビオ司教は南アフリカを敵に回し知恵比べをするキレ者であり、元ユーゴスラビアの要職にあったVIPでありながら、それを全く感じさせない飄々としたユーモラスな人物だ。ビオ司教を嫌いな人はおるまい。ゴルゴもビオ司教に好感を持ったのか、依頼時のプロ同士の視線の絡み合いを経て、アフリカ国境で大規模な紛争を演出してまで依頼を引き受けている。
名作多数のバチカンもの
日本人にとってバチカンは縁遠いものであるが、ゴルゴ読者にとってバチカンは決して縁遠いものではない。ゴルゴ13シリーズにはバチカンを舞台にしたものが多いからだ。しかも『ファイル消失』『ズドロナス・マリヨ』『新法王の条件』『聖なる銀行』『バチカン・セット』と名作多数である。
今エピソードではビオ司教がユーゴスラビアの要職からバチカンの司教に転身しているが、そのあたりの事情は描かれておらず謎である。司教には誰もがなれるわけではなく、敬虔な信徒であることはもちろん、高潔な人格や高い学識が求められる。告解檀の下に隠されている黒電話はビオ司教が俗世と繋がっていることを暗示する小道具か。
クルーガーランド金貨
クルーガーランド金貨……。21世紀に入ってから存在感の薄い“クルーガーランド金貨”であるが、今エピソード発表当時には世の中で強い存在感を放っていた。
日本でも1980年代にブームとなり、切手やコイン収集を趣味とする小中学生男子にとっては垂涎の的であったが、南アフリカの金融・財政を左右するほどの存在であったとは知らなかった。そんな“クルーガーランド金貨”であるが、南アフリカに黒人政権が誕生して以来、発行量は激減している。限定品としてわずかに流通しているばかりとなった。
この作品が読める書籍はこちら
片山 恵右
最新記事 by 片山 恵右 (全て見る)
- ゴルゴ13:第211話『AZ4 CP72』のみどころ - 2021年11月14日
- ゴルゴ13:第410話『イリスク浮上せよ』のみどころ - 2021年6月11日
- ゴルゴ13:第283話『未来への遺産』のみどころ - 2021年5月20日