この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第85巻収録。マフィアのチェザーレは、服飾デザイナーのジュリオの商品を隠れ蓑にして麻薬の密輸を行っていた。DEAのダリオは偽情報を流し取引を妨害するが、チェザーレはジュリオの裏切りだと勘違いしてジュリオを殺害。息子の命の恩人であるジュリオが、自分のせいで亡くなったことを知ったダリオは、個人的な復讐を決意する。
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イタリアの気風も鮮烈だがそれ以上に……
イタリアの中でも自由な気風のナポリが舞台の本話。前半では、ルーズな時間感覚や信号無視連発の交通マナーに振り回される日本人ビジネスマンの姿を通じて、かの国のお国柄を存分に説明している。
が、現在の読者にとっては本話で描かれる日本人の姿もそれはそれで印象的かもしれない。何しろ本話はバブル期の作品。「金儲けのためなら地獄の底にだって行く日本の商社」「恋の時間まで“円”で買われちゃかなわない」など、当時の世相ならではの印象的な台詞が続出する。あの頃の日本の姿は、今や外国よりも遠いものになってしまったのかもしれない。
自信の裏に漂う青臭さが魅力のジュリオ
本話前半の主役といえるデザイナーのジュリオ・コルドーニは、名前からしてジョルジオ・アルマーニがモデルと思われるが、自信家のようでいて青さが顔に出るあたりが人間くさくて魅力的なキャラクターだ。
「俺の才能で成功したんだ!」と言っているコマの表情が、誰より自分に言い聞かせているようで実にいい。実は恋人がマフィアの愛人だったり、最後は誤解で殺されてしまったりと浮かばれない彼だが、後述のソシエールの回想に出てくる彼の笑顔は実に朗らかで、本性は善人なのがうかがえる。もう少し狡猾さがあれば幸せになれただろうに……。
お涙頂戴の復讐譚だが、よく考えると?
『ゴルゴ13』では時折、所属機関などの身分を伏せて接触してきた依頼人に、ゴルゴがそれを見抜いて釘を刺すというシチュエーションが出てくる。今回の依頼の手引きをしたソシエールも、麻薬取締官の身分をゴルゴにあっさり見抜かれているが、本話が一風変わっているのはその後だ。
マフィアに殺されたジュリオは彼にとっても息子の命の恩人であり、彼も個人的にジュリオの仇討ちを望んでいたのである。読者が共感しやすい復讐物だが、よく考えてみると、ソシエールはジュリオの母に報酬を出させておいて復讐にタダ乗りしたという見方も……?
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東郷 嘉博
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