この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第26巻収録。ニューヨークマフィアのボス・ドラーゴが暗殺された。ニューヨーク市警の刑事・ディノは、犯人はゴルゴだと確信するが、その話を息子のカルロの前でしてしまう。ドラーゴの組織から大金を借りており、返済の目処が立たず困っていたカルロは、ゴルゴのネタを新聞社に売りこんで金に換えようと企図する……。脚本:北鏡太
スポンサーリンク
警察官と不良息子、報われない親子の物語
本話はゴルゴと直接関わらない場所で起きる人間ドラマを描く「サイドストーリーもの」と呼ばれるジャンルの一作だ。本話の主役はゴルゴの依頼人でも標的でもなく、一介の警察官を父に持つ不良青年のカルロ。
父の会話から、マフィアのボスを狙撃した犯人がゴルゴだと知ってしまったことを切っ掛けに、彼はマフィアの敵討ち騒動に巻き込まれていくことになる。案の定、カルロは何も報われることなく死んでいくのだが……。1930年の戦争映画『西部戦線異状なし』を思わせる、切ないラストは必見だ(章題も同映画をオマージュしている)。
無音で繰り広げられる圧巻のクライマックス
本話のゴルゴは舞台装置的な役割にとどまり、一言も台詞を発する場面がない。その構成を逆手に取るかのように、本話のクライマックスでは、ナイアガラの滝を舞台に無音のアクションシーンが圧巻の迫力で展開される。
特筆すべきは、瀑布の轟音で話し声や銃声が聞こえないというシチュエーションに合わせ、吹き出しや滝音以外の擬音の一切が省かれていることだ。それでいて、ゴルゴの恐ろしさは強烈な存在感をもって読者に迫ってくる。サイレント映画を彷彿とさせる作りだが、漫画という媒体でここまでの表現ができるのは驚愕というほかない。
札束を撒いて逃げる!ゴルゴ流「金遁の術」
本話のクライマックスでは、挟み撃ちを狙うマフィアの追っ手に対し、ゴルゴはアタッシェケースから大量の札束をぶちまけることで気をそらし、難を逃れる。木の葉のごとく舞い散る無数のドル札が画面を彩る、印象的なシーンだ。
ところで、札束を撒いて群衆の気をそらすシーンといえば、平成の人気漫画『DEATH NOTE』でも見られたが、初出は何なのだろうか。一説によると、歴史上実在した忍術には、お金を撒いて追っ手から逃れる「金遁の術」というものもあったそうだが、そのエッセンスがゴルゴにも受け継がれていると考えると面白い。
この作品が読める書籍はこちら
東郷 嘉博
最新記事 by 東郷 嘉博 (全て見る)
- ゴルゴ13:第536話『神の鉄槌』のみどころ - 2024年9月19日
- ゴルゴ13:第552話『受難の帰日』のみどころ - 2024年9月19日
- ゴルゴ13:第535話『森と湖の国の銃』のみどころ - 2024年9月19日