この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス未収録作品。サウジアラビアなど中東4カ国から国交断絶を突きつけられたカタール。カタールのタミル王子は、自国の花形サッカー選手をゴルゴに狙撃させ、その罪をサウジアラビアに擦りつけることで弔問外交を画策する。しかし依頼をゴルゴに断られてしまい……。脚本:品川恵比寿
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政治の道具と化してしまったスポーツ
「ぼったくり男爵」の異名でクローズアップされたオリンピックやサッカー・ワールドカップなど、もやはスポーツ大会は政治と金の取引の舞台と化してしまった。今作は、その実体を詳細に描いている。
かつてサッカーワールドカップで、フランスの主将ジダンが相手選手から暴言を浴び、暴力をふるった結果退場となり、フランスが敗れたことがあった。ジダンはアルジェリアの貧しい家庭の出身で、イシュタル同様母親思いだった。その母親を侮辱されたことが原因だったが、国の代表といえども、そこには民族の複雑な問題が常に横たわっている。
ゴルゴの敵はやはり自然の脅威
常に心身の鍛錬を怠らず、天下無敵のゴルゴだが、やはり厳しい自然条件には苦戦する。『容疑者トウゴウ』では雪崩に巻き込まれて怪我をし『白龍昇り立つ』ではヒマラヤで高山病に苦しんだが、今回は『ソフホーズ』同様、砂漠をさまよい死にかけている。
「湯水のように」と浪費のたとえに使われるくらい、水資源の潤沢な日本に暮らしていると実感できないが、砂漠の地において水は命そのものである。ゴルゴがラクダの血を水代わりに飲んだのには驚いたが、血液は最大の滋養ドリンクであり吸血鬼伝説もあり得たかもしれないと思ってしまう。
国民に見放されている馬鹿王子につける薬
警察官が「あの王子が国王になった時のことを思うとゾッとするわい」と言い、法の裁きを受けさせることができないことから、お灸を据える情報まで提供するのだから、タミルの馬鹿王子ぶりは半端ではない。どんな名剣といえども、むやみに振り回せばただの凶器である。
権力という剣の使い道をゆめゆめ誤らないよう、馬鹿につける唯一の薬であるゴルゴの銃弾が警告している。今作は世襲政治の最悪な面を赤裸々にえぐり出しているが、世間知らずの世襲・馬鹿殿様達が政治を牛耳るどこかの国も、国民からの信頼にはほど遠い状態にあるようだ。
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野原 圭
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