この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第81巻収録。ゴルゴに流れているのはロシア最後の皇帝・ニコライ2世の血なのか?皇帝に仕えた怪僧・ラスプーチンの血なのか? 歴史の闇に葬られた五番目の皇女・ドーラの謎とは? ロマノフ王朝が残した莫大な財産をめぐり繰り広げられる歴史ロマン。脚本:ミハイル・L・ゴーツ
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ゴルゴ、壮大なルーツエピソード
これも人気が高いルーツエピソードだ。しかも大河ドラマのような壮大な歴史スペクタクル巨編のため、読みごたえがある。このエピソードでは、ゴルゴはロシア帝国・ロマノフ王朝の末裔である第五皇女ドーラの子と推測されている。ドーラの存在はあくまでフィクションだが、実在の写真に基づいたエピソードのためか不思議と本当の話のような気がしてくる。
さらにドーラの父は怪僧ラスプーチンという設定だ。つまりゴルゴの祖父はラスプーチンということになる。ラスプーチンは不思議な力を持っていたという。ゴルゴの強運を思えばラスプーチンの血縁というのは納得がいく話だ。

ターゲットは異父兄弟
今回ゴルゴが狙撃を依頼されたのはソ連が育てた最強の殺し屋、ニコライ・シュヴァイツェル大佐ことニコライ・セルゲヴィチ・ロマノフだ。このロマノフというファミリーネームから判るように、彼もまた第五皇女ドーラの息子だ。ゴルゴでは親子や兄弟が気が付かないうちに敵味方になるというパターンが散見されるが、ゴルゴ自身の異父兄がターゲットというのは他にないはずだ。
もちろんゴルゴのルーツがこのエピソード通りであれば、という仮定のもとではあるが。このニコライ、母親の愛に飢えていた幼少期の描写が胸に迫る。自分を捨てた母を憎み、「母さん……すべてあなたのせいだ」と銃口を向けるシーンは何度読んでも切なくなる。
ルーツ物ならではのお楽しみ
ルーツエピソードは、ゴルゴの生い立ちを追う、あるいはこの『すべて人民のもの』のように偶然たどり着く話だ。必然、ゴルゴと推測される存在の幼少期が描かれることが多い。私はゴルゴの幼少期たちがとても好きだ。特に今回のグレゴリー・皇士・東郷=ロマノフは愛くるしい。魚も突けないほど心優しい姿はこれが狙撃マシーンゴルゴになるのか信じられないほどだ。
村の長老から教わった伝統の狙撃の技を身につけ、誇らしげにはにかむカットも見どころとしてお勧めしたい。ゴルゴは大人のための劇画だから、子どもが子どもらしくふるまっているシーンはそうそう見られない。ルーツ物でゴルゴの幼少期が描かれると、普段のエピソードとは違う無邪気さの描写が多くみられるのも醍醐味だと個人的には思う。

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大科 友美

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