この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第126巻収録。世界を股にかける破壊工作員・ライトニングが主人公の人気コミックを書き続けてきたスヴェンソン。彼は作品に対する情熱を失っており、もう辞めたいと考えていた。が、人気作品を終わらせることを世間は許さない。そこで彼は、自分の死を偽装し、まったく別人として再スタートすることを思いつくが……。
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抱腹絶倒の貴重なお笑いバージョン
ページをめくるごとに、眉間に深いシワが刻まれ、熱いお茶は冷め、かじりかけのセンベイは置き去りにされる。ゴルゴシリーズを読んだことのある人はこんな経験をしたことが一度ならずあるのではないだろうか。でもこの作品はセンベイが湿気る心配はご無用である。
『間違われた男』と並んで、笑い転げながら読める貴重な作品だ。ただし、タイトルと矛盾する結末を除いては。これはシリーズを10作以上読んだマニア中級以上にしかわからない面白さなので、もし最初にこれを読んでしまったら、せめて10作は読んでから、もう一度読み返してほしい。

ジェームズ・ボンド対ゴルゴ13の対決
ゴルゴを自虐的に描写した「女にはモテる、敵の弾は避けていき、自分の弾は百発百中」というセリフにあてはまるもう一人の人物がいる。あの英国情報部MI6の007ことジェームズ・ボンドである。キャラクターは真逆であり、ジェームズは美女なら誰でもおかまいなしだが、ゴルゴは女性の好みにはかなりうるさい。
しかし不死身の男という点については良い勝負である。MI6にとってはどちらも失いたくないので鉢合わせしないようにしているのだろう。ジェームズに『螺旋』のジャヌー警部並の頭脳があれば、ゴルゴといえどもかなり苦戦するだろう
あの世ではゴルエモンが読めるかもしれない
作者のさいとう氏は「自分は藤子不二雄さんのような幼年ものを描きたいという願望があったが実現しなかった」という趣旨のことを述べていたが、そんな氏の願望がのぞく作品だ。作家の池波正太郎氏は仕掛け人シリーズを書きながら「人殺しの話は疲れる」と漏らしていた。
ゴルゴのような緊迫した話もさぞ疲れることだろうと思われ、さいとう氏が幼年ものを描きたかったというのは理解できるし、プロダクションでなければここまで続くことはなかっただろう。今頃は天国で、子供向けの「ゴルエモン」?を楽しげに描いているかもしれない。

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野原 圭

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