この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第179巻収録。スパイクの性能など、肉体の能力以外の要素で勝負が決まることが多くなった陸上競技界。むかえた北京オリンピックでは、コーチ陣が自らが育てた選手を勝たせるため、ライバル選手のスパイクピンを狙撃し、タイムを大幅に遅らせることを画策する……。
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昔は良かったオリンピック
「オリンピックは参加することに意義がある」という時代は過ぎ去った。ロサンゼルスオリンピック以降、プロの参加が認められて以来、選手は用具の宣伝とショーの道具となり、商業化はとどまるところを知らない。
今回はそんな商業優先の舞台裏で進む、コーチ・選手をも巻き込んだ策謀にゴルゴが手を貸すことになるが、果たしてその結末は・・・利権をむさぼる者達の金と欲にまみれた汚い姿を、選手の汗と感動で洗い流そうとするオリンピックの実態に一石を投じた作品だ。もし本当に平等に競うなら、ウエアや用具の規格を統一すべきだろう。
オリンピックは用具の競技となった
最近のオリンピックはもはやシューズや水着などの用具競争と化している。2008年北京オリンピック前に「レーザーレーサー」という水着を着た選手達が記録更新を連発し、話題になった。長距離を泳ぐ選手達には必ずしも有効ではなかったようだが短距離は軒並み記録更新し北島康介選手も金メダルを獲得した。
このレーザーレーサー、着用には3人がかりで10分くらいかかる代物らしいが、その光景はあまり想像したくない。着用後にはトイレにも行かれないこの水着は、結局その後使用禁止になったものの、用具競争は過熱するばかりである。
ゴルゴへの依頼には気をつけよう
本作を読み解くには、最近教育現場に取り入れられた「論理国語」のような国語力が必要である。ゴルゴに依頼するときは言葉を選び的確に意図を伝えなければならない。彼は依頼内容について「エリック・グレイの勝ちにつながるとは限らない」と念を押している。そこはさすがにAIと違う。
もしかするとゴルゴは最初から跳弾を利用する可能性も考えていたのかもしれない。しかし真剣勝負の場で故意にフライングなどしたエリックは結局勝てなかったと思う。ラリーの「神聖なるオリンピックの舞台を守る」という良心が一縷の救いとなっている。
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野原 圭
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