この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第200巻収録。2013年。EU諸国のなかでは一人勝ち状態のドイツ。EUの権力構造は仏独両輪からドイツ一強に変わろうとしていた。それを快く思わないフランスの自動車メーカー・ルドーは、自社にとって理想の欧州統合を実現させるため、ユーロ圏の財政統合を各国に提案する。
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欧州連合国実現の野望は現実となるのか
通貨統合でさえ実現が危ぶまれ、事あるごとに「離脱」の2文字が浮かぶEU・欧州連合が自動車販売競争を機に財政統合・欧州連合国を実現する、という大きな話である。
各国の利害、労働組合を巻き込んだ画策、謀略など複雑な事情を背景にスリリングなストーリーが展開するのだが、その中でマルコとその妻ソフィアの関係、裏路地にあるソフィアのバーに現れるゴルゴなど重要な伏線でありながら情感漂うシーンが胸に迫る。多くの人に長く愛されるのは、難解な内容でも、こうした粋なエンタテイメントの要素を大切にしているからにほかならない。
ソ連はもしかしたら自動車大国になっていた
ドイツ自動車業界の祖であり、今もその名を車に残す天才技術者、F・ポルシェ氏は、かつてスターリンから破格の待遇で技術顧問に請われたことがある。結局ポルシェ氏は断ったのだが、もし彼がソ連に技術供与していたら世界はどうなっていただろう。
氏は大衆車ビートルの開発中ナチに協力したかどでフランスに捕らえられ、囚人として劣悪な環境で技術者として、ただ働きを強いられ体を悪くした。帰国後、娘婿達によって製品化されたビートルが国中を走る光景に「私のビートル」と涙を流したという。フランスにこの行為への反省はあるのか。
飼い犬に手を咬まれたルメール
国家間の利害が絡む外交は、テーブル上で笑顔で握手を交わし、その下で足を蹴り合っている、といわれるが、ゴンザレスもカッサーノも蹴り合う靴の先に刃物を仕込んでいるようなものである。すべてを見通して、得意満面で高笑いしたルメールだが、思わぬ落とし穴にはまる。
3歩先まで読んだはいいが、足下の切り株につまずいてしまった。それにしてもルメールは悪趣味な男である。カッサーノたちを「理念をもたない獣め」と面罵しているが獣はどちらか。現実にこんな人間が存在するなら完全に精神を病んでいる。手を咬まれるのは当然だろう。
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野原 圭
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