この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第114巻収録。ゴルゴが乗った客船の中でエボラ出血熱が発生。感染源はアフリカで捕獲された猿が持っていた新型ウィルスだった。猿の密売人の男を見たゴルゴは、ウィルス感染を見破り警戒するが、不覚にも猿の唾液に接触してしまう。正気を保っていられるのは3日。残り少ないタイムリミットのなか、ゴルゴがとった奇策とは……?
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現実をゴルゴで予習する
ゴルゴを読み始めてからもう20年を超える。連載自体が50年を数えるので私程度の読者はひよっこに過ぎないが、それでもこれだけの年数読んでいると社会問題などを目にして「これは昔ゴルゴで見たな」と思う事例も多くなった。
2014年のエボラ出血熱大流行というニュースを受けて、最初に思ったのもゴルゴのあれだな、だった。同じことを思った読者は少なくないはずだ。とはいえ、このエピソードは1995年に発表されたものなのでいつもの通りゴルゴは社会情勢の最先端を取り上げていたわけだが。
現実の先を進み続ける脚本
作中でゴルゴはエボラ出血熱の宿主であるサルのなかから抗体をもつ個体を捜し出し、遠心分離機で血清を作るという離れ業をやってのける。ゴルゴのしたことを創作の世界の話だと片付けるには早い。実際にエボラ出血熱から回復した患者の血液を輸血して大きな効果をあげているという報告がある。WHOも回復した患者の血液や血清を有効な治療法と認めている。
驚くべきは、この「血液が有効」という手法が公になるより、今エピソードの発表が数カ月早い。ましてWHOが認めたのは2014年。このエピソードの脚本を書いた人物がエボラについて信じられないほど深い見識を持っていたということだろう。
いまだからこその今エピソード
2020年冬から世界は新型コロナウイルスの脅威にさらされている。我らがゴルゴもこのウイルスの影響を受けてビッグコミックへの新作掲載見合わせとなった。ファン諸兄には言うまでも無く、連載開始から初めてのことだ。過去作品が掲載されると聞いてどの話が選ばれるのかと思っていたが、案の定というべきか、掲載されるのはこの『病原体・レベル4』だった。
ラストでは血を口から流す、うつろな目をしたサルが密猟されトラックで運ばれていく。「私たちはいずれ自然に滅ぼされるのだろう……」身につまされるとしか言いようがない。ゴルゴのようにアグレッシブにウイルスと戦うことはできないが、現実なりの戦い方と共存の方法をさぐるべきと考えさせられる。
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大科 友美
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