この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス未収録作品。ギリシャを国際的孤立に招く3人の活動家。陸軍は彼らを同時に狙撃する必要があったため、3人の狙撃兵を選抜、一斉射撃の特殊訓練を開始する。しかし軍内の裏切り者によって狙撃手の一人が重傷を負ってしまう……。脚本:加久時丸
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一石二鳥ならぬ一人三殺の離れ業
冒頭、地面に窓口のあるブルガリア名物クレッグショップが紹介されているが、これは日本のコンビニのような商店であり、24時間営業の店が多いことから防犯上の理由と考えられる。
その立地を利用したゴルゴの跳弾射撃にも唸るが、フレッチャーに依頼されたのは、それを上回る超絶技巧狙撃であり『RBGの悪夢』でも紹介されている離れ業である。3人の精鋭が厳しい訓練を重ねてようやく達成できる難度の狙撃をゴルゴが一人で担うことになるのだが、2.1kmという射程の意味にギリシャ内政の複雑な事情がからみ、最後まで興味が尽きない。
ハイテク機器への目配りも怠りなく
ボーデンブルネン先端技術研究所で、ゴルゴが説明を受ける場面が面白い。ツィーゲ技術員はゴルゴも認める優秀な人物だが、自分の苦労と開発技術への思い入れから「ワインの抜栓を楽しむ」などと釈迦に説法のような長話をしてしまう。
空気を読んだ所長が「ツィーゲ君先へ」と促すが、ゴルゴが笑い顔のピエロの仮面を付けているためか、調子に乗って余計な話をしては所長に「先へ」と叱られる。ゴルゴの銃は長年の相棒デイブをはじめ世界各地の一流の職人から調達されているが、昨今のハイテク技術への目配りも大切にしていることがわかる
一人の軍隊の面目躍如
ここでもやはり利権がらみか、とため息がでるが、利己的欲望のために、副司令官・パコギアニに利用されたサマラスが気の毒だ。
軍の命令系統はひとつでなければならないはずなのに、娘の命と引き替えに司令官の命令には背き、直属の上司・ツァベラスに重傷を負わせるという酷い仕業を強要した卑劣な人間は、フレッチャーのような人物にとって軍人の風上にも置けない輩であろう。パコギアニの陰謀を阻止すべく、ゴルゴは驚くべき「複数弾同時着弾」によりミッションを遂行する。いつもながら「一人の軍隊」の鮮やかな手並みには脱帽である。
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野原 圭
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