この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス未収録作品。AI社会に警笛を鳴らす短編。犯罪組織の殺し屋が次々と変死する事件が発生する。偶然の事故かと思われたが、ゴルゴも襲撃をうけるに至り調査を開始する。ゴルゴの相棒を務める情報屋見習い・ダビが憎めないキャラクター。脚本:夏緑
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小物ぶりが憎めない情報屋の弟子・ダビ
短いページ数でも、一人の登場人物に焦点を当てた名短編が多いのが『ゴルゴ13』という作品。特に一般人や未熟者がゴルゴと関わる話は、他にはないコミカルさが醸し出されて面白い。本話でゴルゴと行動を共にする「情報屋の弟子」ことダビも、まさしくそんな名脇役で、ゴルゴの超絶技巧に逐一舌を巻いて驚くさまは憎めない。
一方、半人前と言われながら、何気にITの知識に長けた部分もあり、土壇場で敵の居場所を突き止めてゴルゴをサポートする活躍も見せている。ゴルゴとは一期一会に違いないが、彼にとって生涯忘れられない経験となったことだろう。
「機械の暴走」がAIの発展で現実に?
『人工知能AIの誤算』など、古くから人工知能との対決を描いてきた本作だが、近年ではAI技術の発展に伴い、その活用法や社会問題を巧みに取り入れたエピソードが増えている。AIの予期せぬ暴走により、無人車やドローンがギャングやゴルゴ達を襲ってくる展開など、まさにAIの危険性を劇画的に誇張してみせたシーンといえる。
二昔ほど前の子供番組では、「機械の暴走」などといって車や電化製品が人を襲いだすという荒唐無稽な話が見られたが、IoT(モノのインターネット)とAIが融合した今、そうした脅威が現実のものとなりつつあるのは興味深い。
ゴルゴのアクションが冴え渡る良短編
僅かなページ数の中で、ダビとゴルゴの束の間の同道、ギャング殺しの謎、そして暴走AIとの壮絶なチェイスと、多くの内容が盛り込まれた本話。無人車のタイヤを撃って車で車を飛び越えたり、追っ手のマシンガンをかわして拳銃で反撃したりと、ダビの絶叫をBGMにゴルゴの超人ぶりが冴え渡るアクションの連続は、手に汗握る迫力がある。
さりげなく撃ち落としておいた釘打銃で、元凶のパソコンを動作停止させる結末も見事。パソコンの主の子供は少し可哀想だが、ダビも言うように、まだまだ大事な仕事をAI任せにするのは夢物語ということだろう。
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東郷 嘉博
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