この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第147巻収録。岸河商事はタイで計画されている地下鉄事業の契約を、タイ側から一方的に破棄されてしまう。原因はライバル企業であるジオメック社が岸河商事よりも60億円も安い価格を提示したためだという。一方、タイ側の技術者・スーチャイはジオメック社が安全性に欠ける廉価な車輪を採用して価格を下げている事実を突き止めるが……。
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商社マンの矜持
本作はタイの地下鉄建設計画が舞台で、実際にモデルとなった事件がある。2000年にフランスのアルストム社・三菱電機・三菱商事がバンコク地下鉄の車両・運行システムを一度は落札したが、再度入札が行なわれて結局ドイツシーメンス社が落札したというものだ。入札価格が23.8億バーツ安いというところまでそっくりだ 。タイのしたたかさは現実世界からも十分窺われる。
本作に登場する岸河商事の金子はなかなかの男だ。ジオメック社の不正を知った後も、「事故が起きるのを待つほど性根が腐ってはいない」と、実際に事故が起きるよりも先にゴルゴへ依頼を行なう。ゴルゴへ依頼すると人が死ぬのでは?と思ってしまうが、彼は「人を死なせない」ためにわざわざゴルゴへ依頼した。岸河グループは『大地動くとき』でも岸川重工が登場しており、このときは重役が殺害されている。
麻薬王暗殺は当て馬だった?
本作ではタイの地下鉄計画のほかに、コスタリカの麻薬王が暗殺され、その部下がゴルゴを襲うというストーリーも同時に進行する。ただし、この話はどう見ても当て馬のようにしか見えない。
というのも、彼らがゴルゴに返り討ちに遭わなければ、今回のゴルゴの仕事の結果は、誰も疑問にすら思わないだろう。麻薬王の暗殺とタイの地下鉄がどうからむのか不思議に思いながら読み進めたが、思いがけない結末だった。当て馬に使われた麻薬王が若干気の毒ではある。
美人秘書にまつわる結末は…
思いがけない結末といえば、金子の秘書麻川もそうだ。美人秘書がバリバリの中年商社マンとタイへ出張という流れから、なんらかのベッドシーンが起こるのではないか、そこへゴルゴが出てきて…という話を想像したが、それとはまったく違った。
同巻に収録されている『バイルス・チェイス』などでは、逆にゴルゴ13の王道ともいえるエロチシズム全開なのだが、この話のように拍子抜けに終わることもある。こうした予想が裏切られるのもまた一興だ。
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秋山 輝
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