この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第83巻収録。フランスの諜報機関にはDST(国内担当)と、DGSE(海外担当)が存在する。両者は次期大統領選挙をめぐって権力争いを繰り返していた。SDECEの生みの親であるユステールは、諜報機関の足の引っ張り合いは国民の利益に反すると考え、両機関の局長2人を暗殺するようゴルゴに依頼する。
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対立の末に共倒れした二人の局長
フランス国内での二つの情報機関の縄張り争いがテーマとなる本話。この時代には、文字通り国外での諜報活動を行う対外治安総局(DGSE)と、国内の防諜やテロ対策を行う国土監視局(DST)が火花を散らし合っていたわけだが、後者は2008年の改編で国内情報中央局に統合されている。
作中では両組織の情報力は拮抗していたように見え、終盤、局長同士が互いに相手の弱みを握っていることを見せあうシーンはなかなかの見ものだが、その直後に二人仲良くゴルゴに狙撃されてしまった。行き過ぎた対立は両者の破滅を招くという端的な例だろう。
交差依頼のオチや依頼ルートも見所
本話では、息子の方のユステールによる裏切り者の狙撃依頼が本筋であるように見えて、その裏では彼自身も義理の父親による依頼のターゲットとなっていたという「交差依頼」が話のオチとなっている。
『ワッピング要塞』のケースと照らし合わせると、両者の利害が直接相反しなければ、ある件の標的が別件の依頼人となることは構わないというゴルゴのルールが見えてくるようだ。また、本話は何気に、ゴルゴへの接触ルートにアマチュア無線のコールサインも存在していることが判明する回でもある。ユステール父の無線趣味が伏線となっているのが芸コマだ。
最近はちょっと失態続き?のDGSE
シビリアン・コントロールとは、軍事力に対する民主主義の統制を意味する言葉だが、本話ではこれが先述の二つの情報機関に関して用いられている。ライバルのDSTが内務省系の秘密警察だったのに対し、本話の「主役側」であるDGSEは国防省傘下の軍事系機関なのだが、人員構成は文民が3分の2を占めているという。
現在は文民統制が機能していると信じたいが、2013年にはソマリアで工作員の救出作戦に失敗したり、2018年には中国との二重スパイが摘発されるなど、ユステール父が生きていたら頭を抱えそうな失態も見られるようだ……。
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東郷 嘉博
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