この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第24巻収録。麻薬組織“コルシカ人組織”の台頭を危惧する麻薬犯罪捜査局は、麻薬精製の中枢を担う技術者にターゲットを絞り、抜本的な解決を目指すことにした。しかし麻薬精製のキーマン“ドクターZ”の正体がどうしても割り出せないため、その任務をゴルゴに託す。はたして“ドクターZ”の正体とは……? 脚本:岩沢克
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ゴルゴの演技力に脱帽
依頼遂行のためなら様々な役柄を演じてみせるゴルゴだが、今回、用心棒としてサンドラに接触した彼はかなりレアな演技を見せている。敵を撃ち倒した直後、わざとらしく拳銃をクルクルと回転させて胸元に収めてみたり、額への一発で殺せるはずの相手を、わざわざ両耳を撃っていたぶってみたり……。
自分をプロではなく二流程度のチンピラと思わせる演出が徹底している。また本話のゴルゴは、混血かと聞かれ「おふくろが日本人だ……」と答えているのも興味深い。本当かどうかはともかく、単に肯定するだけよりリアリティが増す返事である。
中毒者の姿で麻薬の恐怖を実感
「ドクターZ」の正体を炙り出すゴルゴの洞察力が冴える本話。幻覚剤中毒者の描いた人物画が焦点となっているが、時間経過とともにデッサンが狂っていく様子は鬼気迫るものがある。ネットで「LSD 自画像」と検索すると、まさに同じような絵が見られるので、勇気のある方は試してみるといいだろう。
本話のラストで幻覚剤の中毒症状で錯乱し、「ゆ、ゆれている!」などと口走りながら這いつくばって床を舐める「ドクターZ」の姿は衝撃。それを見たゴルゴの協力者・サリーの圧倒された表情も印象的であり、薬物の恐ろしさを改めて思い知らされる。
何度でも復活する麻薬組織
本話のタイトルになっている「ヒドラ」とは、ギリシャ神話に登場する蛇の怪物・ヒュドラーのことで、首を切り落としても復活する再生力を特徴としている。作中の台詞にもあるように、一部を摘発してもすぐに頭をすげ替えて再生してしまう麻薬組織の脅威がこの怪物にたとえられているのだ。
尚、作中に登場する麻薬シンジケート「コルシカ人組織」は、「フレンチ・コネクション」ないし「コルシカ・コネクション」と呼ばれた実在の麻薬密輸ルートに由来すると思われる。本話の発表時期と前後して、この密輸ルートは実質的に壊滅したと言われている。
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東郷 嘉博
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